彼が吸血鬼になるまでの (ページ13)

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くろーりーページ13

「では、ひとまずこの晩をどこで寝泊りするつもりなんだ」

「…それは」

どうしましょう…。

ヴィクターのところに泊めてもらうのは、貞操の危険をひしひしと感じるので断固としてお断りしたい。

とは言っても、あてがあるわけでもない。ふりだしに戻っただけだ。

「…その、クローリー様は、とても紳士なお方だと聞き及んでいます。クローリー様のお世話になるのは…」

「やめておけ、クローリーはあれだぞ。噂ではそうなっているかもしれんが、実際のところ女に目がない変態野郎だ。こーんな美人を見つけたら、目の色を変えて襲いかかるに決まって…」

「ヴィクター様、ヴィクター様！」

ヴィクターが身振り手振りで、ぐおーっと襲いかかるポーズをしながら言葉を重ねていると、おじさん騎士が慌ててそれを止めた。

「なんだ、今クローリーの危険っぷりをいたいけな少女に教えているところで…」

「へえ、誰の危険っぷりを？」

「だから、クローリーの…」

くるりと振り返ったヴィクターが、そこでピシリと動きを止めた。

「ヴィクター、今は街の見回り任務の最中だったと思うんだけど、こんなところで何に油を打っている？」

「お、おう、クローリー。いや、俺は真面目に任務をこなしていたぞ。今も困っている少女の相談に真摯に答えていたところで…」

ははは、と笑うヴィクターの前には、見上げるほどの長身にヴィクター達と同じ騎士の制服を着た茶髪の男が立っていた。

それは、紙の上に描かれた姿を何度も見て、何度も心をときめかせた、大好きなキャラクター。

「く、クローリー、様」

「すまない。ヴィクターが迷惑をかけただろう。よければ僕が相談に乗るけど、何に困っているんだい？」

あのクローリーが、私に向かって話しかけている！

どうしよう、カッコいい、平静を保っていられるだろうか。変なやつだとは思われたくない。頑張れ、私！

「と、泊まる場所を、探してて…」

「泊まる場所…」

クローリーが、ちらりとヴィクターの方を向く。
詳しく説明しろと、目で言っているように見える。

「あー、それがだな」

ヴィクターがそのアイコンタクトに答え、先ほど私が即興で作った設定を述べていく。

こうして改めて人に説明されると、どこかに矛盾や不備がある気がしてとてもドキドキする。

説明を聞いていく度に、クローリーの形のいい眉が潜められていくから、絶対に怪しまれてる。どうしよう！