彼が吸血鬼になるまでの (ページ12)

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せっていページ12

この時代の階級制度というものもよく分かっていないし、下手をしたらその場で切り捨て御免なんて事もあり得るかもしれない。

そんな想像にひいっと顔を引きつらせながら、しどろもどろにお断りの言葉を捻り出す。

「ヴィ、ヴィクター様が不満というわけではなく、その、私としては本当に一晩眠れる場所が欲しいだけで、体を求められても答えられないんです」

「体を売る商売をしているのにか？」

「それが誤解なんです！」

まずはやっぱり、この誤解を解かなくてはいけない気がする。

「こんな格好なので勘違いもされると思いますが、私は…ええと、遠い街でいい暮らしをしていたところを捕まってしまって…そこから、命からがら逃げ出してきたところで…」

嘘である。

バレるかな？いや、ここまで言ってしまったら多少疑われても突き通すしかない！

「元々実家との関係も良くなくて、遠いこの街に来れたことは私としては僥倖だったのですが、手持ちのお金もなく、困り果てているところだったんです」

喋りながら考えた設定なので穴だらけだが、答えられないところは環境の変わったショックで記憶が飛んだという事にしておこう。

どきどきしながら相手の反応を待つ。
ヴィクターは途中からずっと難しい顔をして黙っているが、それはどういう顔なんだ。

「…では、金を払っても、俺と一晩過ごすのは…」

「これでも貴族の家で育てられたので、自分の身をそのように安売りする事はできません」

たぶん！貴族ってそういうものなんじゃないの！？分かんないけど！

きっぱりとお断りの言葉を述べると、ヴィクターは「はああああ」と大きなため息をついて、がっくりと肩を落とした。

そんなにガッカリする…？

「…惜しい…」

「ヴィクター様、そもそも貞潔の誓いを立てた騎士として、女を抱くのは許されていないのですからそう肩を落とされますな」

やれやれと、おじさん騎士がヴィクターを慰める。

なんか、騎士って想像していたよりも緩いというか…だらしない…。

理想と現実のギャップに、こちらもため息を吐きたくなってしまう。