彼が吸血鬼になるまでの (ページ11)

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おことわりページ11

「おい、どうした？」

「ヴィクター様」

私に関心をなくしたようにするテンプル騎士の男に、どうにか分かってもらおうと頭を捻っていると、男の後ろからもう1人騎士の制服を着た青年がやってきた。

最初に話しかけた男は、中年の髭を生やしたどこにでもいそうなおじさんという風貌であったのに対し、後から来た男は長身で、なかなか整った顔立ちをしている。

「店から逃げ出してきた商売女がしつこいのです」

「商売女？ほう…」

紹介の仕方に納得がいかない。なんにも合ってませんよ！

下手に口を出すのも怖くて、むぐぐ…と心の中で文句を言っていると、ヴィクターと呼ばれた男が顎に手を当てて、見定めるようにじろじろとこちらを見てくる。

「美人じゃないか。こんな辺鄙なところで売るには勿体ない」

「ヴィクター様！」

おじさん騎士が、青年を嗜めるように声を出す。
年齢は若いけど、このヴィクターという人は偉い人なのかな？生まれが貴族とか、そういうこと？

頭の先から爪先まで眺める視線に居心地が悪くなる。
くう、女子に対して失礼だと思います！

「泊まるところを探してるんだろ？どうだ、俺と一晩。いい思いをさせてやる」

「ヴィクター様、騎士の誓いは…」

「バレなきゃいいさ。あっちを巡回してるクローリーには内緒にしてくれ」

いたずらっ子のように目を細めて釘を刺すヴィクター。

待って、それより今、クローリーって言った？

「あの」

「ん、ああ、俺の巡回はあと少しで終わるから、あっちの方で待っててくれ。迎えに行く」

「いえそうではなく」

なんだかヴィクターという名前も聞き覚えがあったけれど、もしかしてクローリーと同期だというあのヴィクターだろうか。

文字で読んだことがあるだけなので、音で聞いても分からなかった。

「クローリー様が、近くにいらっしゃるんですか？」

「…なんだ、もしかしてクローリーのファンか？あいつ、どんだけモテるんだよ」

まあ、間違ってはいない。まだ見たことも話したこともないけれど。

「私、お世話になるならクローリー様がいいです」

「俺じゃ不満か」

失礼ながら、不満です。
こんな下心満載の男に着いていきたいとは思えない。

しかし、どうすれば断れるかな。