死なせたりなんかしない side爆豪 ページ15
一瞬びくりと震えて、驚いたように目を丸くしたAは俺だとわかるとほんの少し嬉しそうな顔をする。
「爆豪くん、ごめん。気が付かなくて…、先生から聞いてるかもしれないけど耳が聞こえなくなっちゃったの…ごめんね？」
なんで謝るんだよ。何も悪いことしてないだろ、お前。
口から出かけた言葉は、届かないと気付いて口をつぐんだ。
大きな瞳はまだ涙が幕を張っていて、長いまつ毛には雫がキラキラと光っていた。目元や鼻は真っ赤で、どうしてこいつが今笑ってるのか、俺には到底理解もできなかった。
本当は大声あげて泣いてた癖に。笑う余裕すらない癖に。
「でも心配しないで！調子がいい日は聴こえる事もあるだろうって先生も言ってたから！」
そう言ってから元気のように笑うAをそっと抱き寄せた。肩が、呼吸が、ほんの僅かに震えていた。伝わってくる振動を抑えるように抱き寄せた腕に力を込める。
おずおずと背中に回された腕は細くて柔くて、今にも折れてしまいそうだった。
「…どうかしたの？」
数週間前、こいつの実家を訪ねた時のことを思い出した。あまり愛想のないババアだった。娘の死が迫ってると言うのに、妙に他人行儀だった。
…いや、血縁があれどもう他人同然に思っているのだろう。そうに違いないのだ。
『ーーーーーーそう、あの子から聞いてないのね』
俺を憐れんだような目だった。「お前には救えない」と叩きつけられたようで、神経を逆撫でされている気分だ。
…でも、解除条件を聞いた時に妙に腑に落ちた。
今解除されてないなら、”そう言う”事なのだから。
「”好きな人と結ばれれば”、
なんて。…どこのおとぎ話だよ。ふざけんな。…ふざけんなよ。」
もしこいつが俺の事を好いてくれていれば、なんて、夢物語である。現に呪いが解除されてない時点で「好きな人と結ばれていない」と言う事なのだ。
こんなアホらしくて、バカらしくて、他人任せて悪趣味な個性があるか。
背中に回った手が優しく背中を撫でた。あまりに弱々しくてくすぐったい。視界が白く霞む。限りなく黒に近くなったその髪に額をつけた。
「私は大丈夫だよ、爆豪くん。」
「………そんなわけ、あるかよ。ばーか」
ぽたり、と床に落ちた水滴は誰のものだったろうか。
「………なんで俺じゃなんだよ。俺なら絶対、」
お前を死なせたりなんかしない。
終わり
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るん(プロフ) - このシリーズ大好きです。続き楽しみにしてます！！ (2021年9月9日 12時) (
レス) id: a052de4372 (このIDを非表示/違反報告)
pandahero(プロフ) - 続編おめでとうございます！今後も応援してます!続きがめっっっっっちゃ楽しみです！！！ (2020年11月21日 5時) (レス) id: 0b60fa6ccb (このIDを非表示/違反報告)
山野 珠雨(プロフ) - 焼海豚?さん» 更新が大変遅くて申し訳ないです…本当に嬉しいです！わざわざコメントまでありがとうございます！励みになります！ (2020年11月12日 21時) (レス) id: 9a02cd01d7 (このIDを非表示/違反報告)
焼海豚?(プロフ) - 数日前から読ませていただき、もうここまで追いつきました……！とても面白く時々泣いてしまって完全にファンです……更新をたのしみにしてます！！ (2020年9月25日 0時) (レス) id: 137a1b63be (このIDを非表示/違反報告)
山野 珠雨(プロフ) - 私情なのですが、話をまとめていたメモが破損してしまい丸ごと消えてしまいました。なのでお話の辻褄が合わなくなったりしてしまう可能性がございますが、許容としてくだされば幸いです。不定期ですが更新していけたらなと思ってます。 (2020年4月30日 11時) (レス) id: 9a02cd01d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：山野朱雨 x他1人 | 作成日時：2018年10月3日 23時
