彼女の笑顔で ページ10
額に冷たい感覚がして目を開けた。
視界が少しぼんやりとして、徐々にはっきりと見えるようになる。
「Aちゃんっ…大丈夫？」
冷たい感触のある右目の上あたりの額に手を当てると、冷たいタオルのようなものの感触。
身体を起こそうとすると、お茶子ちゃんが優しく背中に手を添えて支えてくれた。
上半身を起こすと、額のタオルがポロリと落ちる。
額にわずかな痛みを感じて触れると、ざらりとしたものに触れた。
「あんまり動かない方がいいかも…倒れる時に頭打っちゃって、ガンヘッドさんの事務所の救護担当の人が手当てしてくれたよ」
お茶子ちゃんに渡された水に口をつける。掌に乗っけられた錠剤をゴクリと飲み込んだ。
手に触れたのは包帯だったらしい。
ぼーっとして、頭が痛くて、身体が熱い。
布団に戻る時も、お茶子ちゃんが背中に手を添えて支えてくれて、ぼんやりする頭に罪悪感がよぎるのがわかった。
「手当ても終わったし、薬も飲んだし、もう眠って大丈夫だけど…眠れる？」
「……お茶子ちゃ、」
あまり声を出していないからか、寝起きだからか、風邪だからか。
掠れたような声が出て、それは自分で思ったよりずっと弱々しいものだった。
罪悪感と不甲斐なさで潰れてしまいそうだ。
視界が歪むのは、身体や頭に熱がこもってるからだろうか。
「ごめ、ね」
本気で私を心配してくれているのだとわかった。
私が横になっているベッドに腰を掛けて、私の手をぎゅっと握ってくれていた。
今は真夜中だ。
そんな時間に起きててくれてて、眠いはずなのに私のそばで私が安心する言葉を掛けてくれる。
それが死ぬほど嬉しくて、すごく悲しかった。
私はなにもしてあげられてないのに。
なにも話してないのに。
「ごめん、お茶子ちゃん…ごめんっ」
歪んだ視界がはっきりして、また歪んで、頬に涙が伝って、枕を濡らす。
死ぬまでに、私は彼女に何かしてあげられるだろうか。
今まで彼女がしてくれた事以上の事を返してあげられるだろうか。
ポロポロ涙を落としていると、お茶子ちゃんが顔を歪めて、じんわりと目に涙が浮かんで行く。
「なんで謝るの？私ね、Aちゃんと笑ってお話しできるだけで、すごい幸せ
ずっと続けばいいなって思ってるんだよ」
そう言って涙を堪えて笑う彼女に、
私はまたも救われてしまうのだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 595人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
山野 珠雨(プロフ) - 梅姫美さん» ありがとうございます！これからもかっこいいかっちゃんをお届けできるように頑張ります！ (2018年9月15日 19時) (
レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
梅姫美(プロフ) - やだ。かっこいい。ありがとうございます。もう。はい。いい作品ではい。めっちゃいいとしか言えない。！ (2018年9月13日 18時) (レス) id: c23f604db7 (このIDを非表示/違反報告)
山野 珠雨(プロフ) - 桃兎さん» 返信遅くなり申し訳ありません！あなたのような優しい言葉を掛けてくれる方がたくさんいて本当に救われています。まだまだ未熟な私ですが、皆様の応援を糧に頑張ります！ (2018年8月20日 1時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
桃兎(プロフ) - 初コメ失礼します！ 私もそんな沢山評価来る様な作品あまり作れませんが、コメント、評価の通知にビビる気持ち凄く分かります！ お話凄く面白いので、更新いつも楽しみです！頑張って下さい！ (2018年8月1日 10時) (レス) id: 050cf08f0a (このIDを非表示/違反報告)
山野 珠雨(プロフ) - 苺デラックスさん» いつもありがとうございます！遅い更新になってしまいますが、最後までどうかよろしくお願いします。 (2018年7月29日 18時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：山野朱雨 | 作成日時：2018年3月9日 23時
