慣れない心臓の鼓動 ページ39
目を開けると、妙に気だるい事に気がつく。
熱とか、風邪とか、そういう類のだるさでなく、単純に瞼の重さ。
気づけばそこは自分の部屋で、見慣れた天井といつもの鳥の鳴き声が私を迎えていた。
「…ん、？」
私はぼやける思考でこの部屋に来るまでの記憶を呼び起そうとした。けれど何も浮かばなくて首を傾げる。
昨夜、爆豪くんにくしゃくしゃに頭を撫でられた後の記憶がすっぽり抜けているのだ。
瞼が重いのは、お茶子ちゃんの前でたくさん泣いてしまったからだろう。
その時、耳元に温かい風が吹きかかった。
びくりと体を震わせ、あまりの驚きに声も出ない。
横を見れば蜂蜜色の髪の毛と白い肌。眉間に皺のない爆豪くんの顔がある。
「ッッ!!!!!ば、ばくごうくっ」
寸前で眠っている事に気がつき慌てて口を閉じた。
体のだるさはこの身体の動けなさからきているのかも知れない。
何しろ爆豪くんの手は強く腰に回され逃げられないほど抱き締められているのだから。
ぴったりと密着して感じる温かい体温や鼓動、息をするたび揺れる身体、顔が近くて感じる息遣いや優しく閉じた瞼。
自覚すればするほど心臓が痛いほど音を立てる。
(は、早く起きて…っ)
こんなにもドキドキとして緊張すると言うのに、私は呑気に「寝てる時の爆豪くんは幼くて可愛いな」なんて事を考えていた。
けれども、こんな可愛い寝顔の爆豪くんはとても起こせない。やはり起きるまで待つしかないらしい。
時々鼻を掠める柔軟剤の匂いがあまりにも心臓に悪くて、私は早く起きてくれと祈るばかりだ。
「………爆豪くん、いつもありがとう」
なんだか妙に愛しくなって、頬に指を滑らせて見た。そして頬をなぞった指をそのまま唇に掠めさせる。
唇の上で指を数秒止めた。
爆豪くんの唇は柔らかくて、そっと手を離した。
隠しきれるかなんてわからないけれど、やはりこの気持ちは奥底にしまっておこうと思う。
奥深くに閉じ込めて、私はその気持ちを誰に知られる事もないまま病院のベッドで眠りにつくのだ。
こうして言葉にしてみると少し寂しい気もするけれど、それがきっと彼が1番幸せになる道なのだと思う。
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山野 珠雨(プロフ) - 梅姫美さん» ありがとうございます！これからもかっこいいかっちゃんをお届けできるように頑張ります！ (2018年9月15日 19時) (
レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
梅姫美(プロフ) - やだ。かっこいい。ありがとうございます。もう。はい。いい作品ではい。めっちゃいいとしか言えない。！ (2018年9月13日 18時) (レス) id: c23f604db7 (このIDを非表示/違反報告)
山野 珠雨(プロフ) - 桃兎さん» 返信遅くなり申し訳ありません！あなたのような優しい言葉を掛けてくれる方がたくさんいて本当に救われています。まだまだ未熟な私ですが、皆様の応援を糧に頑張ります！ (2018年8月20日 1時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
桃兎(プロフ) - 初コメ失礼します！ 私もそんな沢山評価来る様な作品あまり作れませんが、コメント、評価の通知にビビる気持ち凄く分かります！ お話凄く面白いので、更新いつも楽しみです！頑張って下さい！ (2018年8月1日 10時) (レス) id: 050cf08f0a (このIDを非表示/違反報告)
山野 珠雨(プロフ) - 苺デラックスさん» いつもありがとうございます！遅い更新になってしまいますが、最後までどうかよろしくお願いします。 (2018年7月29日 18時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：山野朱雨 | 作成日時：2018年3月9日 23時
