不器用な撫で方 ページ38
「…ただいま〜…」
静かに扉を開けて、寝ているであろう爆豪くんを起こさぬよう音を立てないように靴を脱いだ。
あれから、だいぶ話し込んでいたらいつの間にか10時を回っていたのだ。
爆豪くんは大抵9時には寝てしまうし、私もいつもはそのくらいに寝るのだけれど。
(…お茶子ちゃんが全部受け止めてくれてよかった)
全て口に出した事で、私の心は少しだけ軽くなっているようだ。これでもう後ろめたい事は何もない。
「……爆豪くん怒ってるだろうなぁ…」
明日私の頭にゲンコツが落ちるであろう事を想定して身震いをした。
ああでも、心配してくれるのは少しだけ嬉しいかなぁ…。
そんな事を思いながらリビングへ向かうと、扉からぼんやりとした光が差し込んでいた。
「…消し忘れ？珍しいな…」
恐る恐る扉をあげると、ソファーに見覚えのある姿があって動きがピタリと止まる。
それと同時に足元からぎし、と音がして爆豪くんがすごいスピードで振り返った。
そして鬼の形相で私の前までドンドンと歩いてくる。ひえっ、と情けない声が出た。
「ご、ごめ…」
「てめー連絡くらいできんだろうが!!あと10分帰って来なかったら探しに行こうかと思ったわ！クソが！！！！！」
「あ、その、そんな遅い時間だとは思わな」
「だから俺がわざわざ連絡しただろうが！！！何のために携帯持ってんだ！！！！！！」
相当ご立腹らしい爆豪くんは夜遅いにも関わらず怒鳴り声を惜しみなく私に降らせた。
慌てて携帯を見ると、12件の通知で画面が埋まっている。「何時ごろ帰ってくんだ」「今どこだ」「何時だと思ってやがる」そんな文面から心配してくれているのが伝わって、罪悪感に胸が痛む。
「ご、ごめんなさい…………次から気をつける」
肩を落としてそう言うと、爆豪くんは大きなため息をついた。また呆れられてしまったと少し気持ちが暗くなって、俯く。
「…………言えたんかよ、」
「…！……う、うん。言えたよ」
そう言うと爆豪くんがもう一度ため息をついた。
でもそのため息は安堵の混じったもので、心が温かくなる。
「頑張ったな、」と不器用に頭をくしゃりと撫でられて私は頬がほころんだ。
少しだけ泣きそうになったけれど、今日はもう泣かないと決めていたから、必死にこらえた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 595人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
山野 珠雨(プロフ) - 梅姫美さん» ありがとうございます！これからもかっこいいかっちゃんをお届けできるように頑張ります！ (2018年9月15日 19時) (
レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
梅姫美(プロフ) - やだ。かっこいい。ありがとうございます。もう。はい。いい作品ではい。めっちゃいいとしか言えない。！ (2018年9月13日 18時) (レス) id: c23f604db7 (このIDを非表示/違反報告)
山野 珠雨(プロフ) - 桃兎さん» 返信遅くなり申し訳ありません！あなたのような優しい言葉を掛けてくれる方がたくさんいて本当に救われています。まだまだ未熟な私ですが、皆様の応援を糧に頑張ります！ (2018年8月20日 1時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
桃兎(プロフ) - 初コメ失礼します！ 私もそんな沢山評価来る様な作品あまり作れませんが、コメント、評価の通知にビビる気持ち凄く分かります！ お話凄く面白いので、更新いつも楽しみです！頑張って下さい！ (2018年8月1日 10時) (レス) id: 050cf08f0a (このIDを非表示/違反報告)
山野 珠雨(プロフ) - 苺デラックスさん» いつもありがとうございます！遅い更新になってしまいますが、最後までどうかよろしくお願いします。 (2018年7月29日 18時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：山野朱雨 | 作成日時：2018年3月9日 23時
