桃色のエプロン 爆豪side ページ29
何かの匂いに釣られてうっすらと目を開ける。
目を開けたそこは見覚えのある薄い茶色の天井で、手にふわふわとしたものの感触があった。
携帯を手繰り寄せてみると、時刻は午後7時を指していた。ハッとして勢いよく飛び起きる。
さっき手にあった柔らかい感触は、俺の身体に掛けられた膝掛けだったようだ。
「あれ、爆豪くん起きたの？
疲れてた？いつもごめんね」
眉を下げて俺の元に歩み寄ってきたそいつは桃色のエプロンを下げていて、人差し指には絆創膏が巻かれていた。
エプロンを着けているそいつを見ていたいような、目を逸らしてしまいたいような。
そんな気持ちにさせられて堪らなくなった俺は顔を背けて立ち上がった。
「たまにはご飯作ろうかなぁって思って
爆豪くん疲れて寝てたでしょ？」
机には夜飯が並べられている。
ビーフシチューなんて言うなかなか凝ったものが並べられていて、指の絆創膏を照らし合わせた。
やはり怪我をせずに料理と言うのも難しいらしい。
元々料理はできる方なのだとは思うが、今は持っているものを落としてしまうくらい力が安定していない姿も時々見る。
「………お、怒ってる？」
「…別に。」
俺は席に着くと、淡々と、特別好きなわけでもないのに妙に美味く感じるビーフシチューを口に運んだ。
エプロンを脱ぐ事を忘れたまま食べているAに目を向ける。
俺の視線に気がついたのか、Aが気まずそうに俺を見た。
「美味しくなかった…？」
不安そうな顔にいたたまれなくなって、目を逸らす。「上出来」。そう言うと、Aは心底嬉しそうににっこりと微笑んだ。
見慣れたその笑顔は、あと何度見れるだろう。
この生活も、あとどれだけだろう。
柄にもなくそんな事を考えては、胸の奥につっかえているものを振り払うように拳を握る。
ただ、この笑顔が少しでも長く続いてくれないものかと。ただただ、そう思った。
気まずくはない沈黙の中、残り少なくなったビーフシチューの器から顔を上げる。
もう一度俺がAの姿を盗み見した時、ようやく自分がAのエプロン姿に見惚れてしまっていた事に気がついたのだ。
阿呆らしくて、少し笑えた。
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山野 珠雨(プロフ) - 梅姫美さん» ありがとうございます！これからもかっこいいかっちゃんをお届けできるように頑張ります！ (2018年9月15日 19時) (
レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
梅姫美(プロフ) - やだ。かっこいい。ありがとうございます。もう。はい。いい作品ではい。めっちゃいいとしか言えない。！ (2018年9月13日 18時) (レス) id: c23f604db7 (このIDを非表示/違反報告)
山野 珠雨(プロフ) - 桃兎さん» 返信遅くなり申し訳ありません！あなたのような優しい言葉を掛けてくれる方がたくさんいて本当に救われています。まだまだ未熟な私ですが、皆様の応援を糧に頑張ります！ (2018年8月20日 1時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
桃兎(プロフ) - 初コメ失礼します！ 私もそんな沢山評価来る様な作品あまり作れませんが、コメント、評価の通知にビビる気持ち凄く分かります！ お話凄く面白いので、更新いつも楽しみです！頑張って下さい！ (2018年8月1日 10時) (レス) id: 050cf08f0a (このIDを非表示/違反報告)
山野 珠雨(プロフ) - 苺デラックスさん» いつもありがとうございます！遅い更新になってしまいますが、最後までどうかよろしくお願いします。 (2018年7月29日 18時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：山野朱雨 | 作成日時：2018年3月9日 23時
