不機嫌なお迎え ページ19
「え…お茶子ちゃん先に帰っちゃったんですか！？」
私は荷物を持って事務所の前に立っている。
そしてガンヘッドさんから聞かされた事実に呆然と立ち尽くした。
別に困るわけではないけれど、1人でさっさと帰ってしまうのは少しだけさみしい。
「君は誰かが迎えに来るって……あ、電車の時間きちゃうよ！」
「あ…そ、そうだ！お世話になりましたっ…！本当に何から何までありがとうございます！」
私はガンヘッドさんに向けて勢いよく腰を折る。
頭を下げると、紫色の髪が重力に従って垂れ大々的に視界に入る。
少し顔を上げてガンヘッドさんの顔色を伺うと、ガンヘッドさんは困ったように行き場のない手を中に浮かせていた。
「いいんだよ、身体は大事にね！」
「は、はい…！」
結局最後の1日訓練に参加できなかったけれど、私も少しは強くなれたのだろうか。
そうだといいな。
そんな事を考えながら、私は深く下げていた頭をゆっくりと上げた。
ガンヘッドさんが優しい人で本当に良かった。
「…あの人が…君のお迎えかな？」
「…お迎え…？」
ガンヘッドさんの視線を追って、私は後ろを振り返る。すると、視界に蜂蜜色と透き通る赤色が入った。ハッと息を飲む。
持っていた荷物が落ちそうになって、慌てて抱え直した。
赤い瞳がまっすぐに私を見ていて、何を話せばいいかわからなくなる。
「…いッ!?」
ベシッ、と怪我をしていない方の頭を叩かれて鈍痛が走った。私は荷物を持っていない手で痛む額あたりを抑える。
何をするの…と言う目で爆豪くんを見ると、爆豪くんは不機嫌そうに私を睨みつけた。
「な、なんで怒ってるの…そりゃ迷惑掛けたけど、電話では全然…」
「腹立った」
「ええ…」
理不尽な理由に肩を落とすと、背を向けて歩き出した爆豪くんに着いていく。
はっとして後ろを振り向くと、ガンヘッドさんに向かって小さくお辞儀をした。
「早くしろ」
「ま、待ってっ…」
ちらりと私を見てから、相変わらずの不機嫌な顔で私を見る爆豪くんを小走りで追う。
ふ、と。夏の匂いが鼻をかすめた気がした。
小走りしていた足が止まりそうになるけれど、私はそれを振り切って爆豪くんの隣に並ぶ。
歩きながら爆豪くんの顔を盗み見していると、気づいたのか爆豪くんと目が合った。
私は逸らす事なく、微笑む。
こんな事をできるのも、あと何回だろう。
正体不明の不安を覚える。
そんな本音には、気づかないふりをした。
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山野 珠雨(プロフ) - 梅姫美さん» ありがとうございます！これからもかっこいいかっちゃんをお届けできるように頑張ります！ (2018年9月15日 19時) (
レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
梅姫美(プロフ) - やだ。かっこいい。ありがとうございます。もう。はい。いい作品ではい。めっちゃいいとしか言えない。！ (2018年9月13日 18時) (レス) id: c23f604db7 (このIDを非表示/違反報告)
山野 珠雨(プロフ) - 桃兎さん» 返信遅くなり申し訳ありません！あなたのような優しい言葉を掛けてくれる方がたくさんいて本当に救われています。まだまだ未熟な私ですが、皆様の応援を糧に頑張ります！ (2018年8月20日 1時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
桃兎(プロフ) - 初コメ失礼します！ 私もそんな沢山評価来る様な作品あまり作れませんが、コメント、評価の通知にビビる気持ち凄く分かります！ お話凄く面白いので、更新いつも楽しみです！頑張って下さい！ (2018年8月1日 10時) (レス) id: 050cf08f0a (このIDを非表示/違反報告)
山野 珠雨(プロフ) - 苺デラックスさん» いつもありがとうございます！遅い更新になってしまいますが、最後までどうかよろしくお願いします。 (2018年7月29日 18時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：山野朱雨 | 作成日時：2018年3月9日 23時
