夢じゃない ページ17
『…………さぁな』
散々溜めておいて、これだ。爆豪くんが発した言葉にキョトンとする。
その含みのある言い方では、あれは現実だったのか、はたまた爆豪くんがからかってるだけなのか。
どちらにせよ、そんな言い方をされたら気になってしまう。ただでさえ知りたくて堪らなかったのに。
「………うー…」
『もう休憩終わるから切んぞ』
結局真相はわからないし、そのまま切られてしまうのもなんだかムズムズする。
…けれど、爆豪くんは職場体験中だし、昨夜大迷惑を掛けた私がわがままを言える立場でもなかった。
私は大人しく従おうと、悔しさからか小さなため息が漏れる。
「……わかった」
我ながら、拗ねた子供のような声だったのではないかと思った。
この歳で「拗ねた子供」と表現するのも少しばかり恥ずかしいものだけれど、その言葉がぴったりだ。
そのせいか、爆豪くんは電話の向こうで少し「ふっ、」と笑ったような気がした。
『………じゃあな、A』
ぷちり、と一方的に電話が切れる。
ぽかんと口を開ける私には気もくれず、無情にも電話が切れた後の「プー、プー、」と言う音だけが小さく部屋に響いた。
そして数秒後、私の手から離れた携帯が地面に落ち、ガチャンと音を立てる。
(…………絶対、夢じゃない)
だって声も、言い方も、全部全部、
昨夜のぼんやりと蘇るあの声と同じなのだ。
これが夢ならば、私の妄想力も大したものだ。
それはそれで凹むけれど、間違いない。昨夜の声は爆豪くんのもので、爆豪くんは確かに私の名を呼んだ。
次の瞬間、呆然と立ち尽くしていた私の胸がカッと熱くなる。
胸から溢れそうになるくらいいろんなものが溢れ出して勢いよく息を吸った。
「………名前、呼んでくれた…」
どう言う風の吹き回しかどうかはわからないけれど、今はそれがただひたすらに嬉しい。
よかった。夢じゃなかった。あの爆豪くんの声は確かに本物だったのだ。
それに、その声がもう一度聞けた。
こんな幸せでいいのだろうか。
私も一度くらい、名前で…、
「…………か、か…かつ、」
私は言葉を止めて、数秒黙り込む。
そして時間差で、顔がすごく熱くなった。
私にはまだ早かったようだ。
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山野 珠雨(プロフ) - 梅姫美さん» ありがとうございます！これからもかっこいいかっちゃんをお届けできるように頑張ります！ (2018年9月15日 19時) (
レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
梅姫美(プロフ) - やだ。かっこいい。ありがとうございます。もう。はい。いい作品ではい。めっちゃいいとしか言えない。！ (2018年9月13日 18時) (レス) id: c23f604db7 (このIDを非表示/違反報告)
山野 珠雨(プロフ) - 桃兎さん» 返信遅くなり申し訳ありません！あなたのような優しい言葉を掛けてくれる方がたくさんいて本当に救われています。まだまだ未熟な私ですが、皆様の応援を糧に頑張ります！ (2018年8月20日 1時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
桃兎(プロフ) - 初コメ失礼します！ 私もそんな沢山評価来る様な作品あまり作れませんが、コメント、評価の通知にビビる気持ち凄く分かります！ お話凄く面白いので、更新いつも楽しみです！頑張って下さい！ (2018年8月1日 10時) (レス) id: 050cf08f0a (このIDを非表示/違反報告)
山野 珠雨(プロフ) - 苺デラックスさん» いつもありがとうございます！遅い更新になってしまいますが、最後までどうかよろしくお願いします。 (2018年7月29日 18時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：山野朱雨 | 作成日時：2018年3月9日 23時
