【バカ】へ 爆豪side ページ13
「おい、あいつに代われ」
別に、「これを言ったら間違いなく泣き止む」なんてものは存在しない。
なんなら「絶対に泣く言葉」の方が頭に浮かぶし、そもそも泣き止ませる状況に立ち会う事は想定していなかった。
が、この泣き虫な様子じゃ今回に限らずこの先何度もありそうだ。
「……おい、」
そう言うと、電話の奥でそいつのものらしき息遣いが薄っすらと聞こえる。
小細工は思いつかない。そもそも、女を元気付ける方法を俺は知らない。
でも不安があるなら、その不安をどうにかしちまえばいい。なんて簡単に考えてみても、口から出るのはあまりにもストレートなものだ。
「お前はなんで泣いてんだ」
『…………なん、で…？』
そのか細い涙声に、携帯を握る手に少し力が入る。
こんなにも弱い生き物に、どうしたってこんな残酷な個性が宿っているのか微塵も理解できない。
そいつは、また泣いてるような声を出して言葉を詰まらせた。
『…わたし、』
細くて小さな声に、耳を澄ませる。
声は震えていて、熱の混ざる詰まったような吐息をついたのが聞こえた。
早くぶちまけて、早く寝ちまえ。
そして、早く治して家に帰って来ればいい。
『っ、迷惑…たくさん、
私まだ、お茶子ちゃんに話せてない…大事な事、たくさんあるのに…』
熱のせいか、本人が隣にいる事を忘れたかのように喋るそいつは少し痛々しい。
どれを言うべきでどれを言うべきでないか、なんて事は高熱の頭じゃ考えられないだろう。
そいつが話す言葉の一つ一つが、断片的でまるで文になってない。それでも確実に、喉元にある不安を少しずつ口にした。
『私何もできてないのに、迷惑ばっかなのに、
みんなが隣にいてくれるから…』
「……おい、」
『嫌われたらって思って、こわい…』
“罪悪感”と”恐怖”
こんな個性を持って産まれたんだ。そんな濁った感情から簡単に逃げられるはずもない。
どうにかできる方法を俺は知らないが、思った事を、思ってる事を言うことくらいしかできない。
だから、「バカ」へ。
「………A、」
『…っ…？』
たまには涙一つ止めてやれる言葉でも、かけてやろうかと思う。
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山野 珠雨(プロフ) - 梅姫美さん» ありがとうございます！これからもかっこいいかっちゃんをお届けできるように頑張ります！ (2018年9月15日 19時) (
レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
梅姫美(プロフ) - やだ。かっこいい。ありがとうございます。もう。はい。いい作品ではい。めっちゃいいとしか言えない。！ (2018年9月13日 18時) (レス) id: c23f604db7 (このIDを非表示/違反報告)
山野 珠雨(プロフ) - 桃兎さん» 返信遅くなり申し訳ありません！あなたのような優しい言葉を掛けてくれる方がたくさんいて本当に救われています。まだまだ未熟な私ですが、皆様の応援を糧に頑張ります！ (2018年8月20日 1時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
桃兎(プロフ) - 初コメ失礼します！ 私もそんな沢山評価来る様な作品あまり作れませんが、コメント、評価の通知にビビる気持ち凄く分かります！ お話凄く面白いので、更新いつも楽しみです！頑張って下さい！ (2018年8月1日 10時) (レス) id: 050cf08f0a (このIDを非表示/違反報告)
山野 珠雨(プロフ) - 苺デラックスさん» いつもありがとうございます！遅い更新になってしまいますが、最後までどうかよろしくお願いします。 (2018年7月29日 18時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：山野朱雨 | 作成日時：2018年3月9日 23時
