やさしい嘘だった ページ27
私は試着室にいた。
スイーツを食べた後、そのまま再び服を買いにお店に入りなぜか試着室に入れられた私の腕には2着3着と服が掛けられている。
鏡の中の自分と腕に掛かっている服を交互に見て、私は戸惑いの中大人しくその服を着ることにした。
事の発端はお茶子ちゃんの一言だった。
「Aちゃんの勝負服を買いに行こうと思うんだ。デート用に」
「…えっと、デートに行く予定はないんだけど…」
「ここで買います！」
お茶子ちゃんは白と黄色の看板の掛かったお店に私の手を引いて入っていった。
入ってから数分でお茶子ちゃんはどんどん服を手に取り、その服を私に押し付けた。
何が何だかわからないまま、試着室に通されて今に至る。
「………似合わないかなぁ」
鏡の前でくるりと回ってみても、なんだか可愛らしい子の服は私の髪や顔とは合わない気がした。
私の髪は醜い色だし。顔だって…。
桜色のスカートと、それにインをしているノースリーブの白いブラウス。
どれも惹かれるし可愛いけど、いざ私が着るとなんだか違う気がした。
「終わった？」
「あ、うん！着替えたよ!!」
ハッとして鏡に背を向けて、勢いよく開くカーテンの前に立った。少し心臓の鼓動がうるさくなる。
桜色のスカートをきゅっと握りしめてお茶子ちゃんをみた。
「似合ってる！！！！」
迷う事なくお茶子ちゃんがそう言ってくれた事で、少しだけ肩の力を抜いた。
逆に恥ずかしくなって俯く。
お世辞かもしれないけど、よかった。
誰かとデートする予定はない、と言おうと思ったところをさっき遮られてしまったけれど、もう一度言った方がいいのだろうか。
「…あの、お茶子ちゃ」
「これは私が払うから、デートの時着るんよ！」
「え！？そんな、私が着るんだから私が払うよ！」
「誕生日プレゼント！」
お茶子ちゃんが私をみてニィッと笑った。
すごく、泣きそうになった。
「7月だよね？プレゼント早くなっちゃったけど、誕生日にもケーキ買って行くからさ」
拳を握り締める。
涙が溢れないように溢れた。
嬉しいけど、その日は来ないかもしれない。
私に誕生日は来ないかもしれない。
「………やっぱり、お茶子ちゃんはわかってるんだよね」
何かあるって事。
隠し事をしてる事。
でもお茶子ちゃんは笑うだけだった。
「なんの事？」
「………ううん、ありがとう」
掠れた声に、お茶子ちゃんは気がつかないフリをしてくれた。
やさしい、やさしい嘘だった。
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山野 珠雨(プロフ) - 梅姫美さん» ありがとうございます！これからもかっこいいかっちゃんをお届けできるように頑張ります！ (2018年9月15日 19時) (
レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
梅姫美(プロフ) - やだ。かっこいい。ありがとうございます。もう。はい。いい作品ではい。めっちゃいいとしか言えない。！ (2018年9月13日 18時) (レス) id: c23f604db7 (このIDを非表示/違反報告)
山野 珠雨(プロフ) - 桃兎さん» 返信遅くなり申し訳ありません！あなたのような優しい言葉を掛けてくれる方がたくさんいて本当に救われています。まだまだ未熟な私ですが、皆様の応援を糧に頑張ります！ (2018年8月20日 1時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
桃兎(プロフ) - 初コメ失礼します！ 私もそんな沢山評価来る様な作品あまり作れませんが、コメント、評価の通知にビビる気持ち凄く分かります！ お話凄く面白いので、更新いつも楽しみです！頑張って下さい！ (2018年8月1日 10時) (レス) id: 050cf08f0a (このIDを非表示/違反報告)
山野 珠雨(プロフ) - 苺デラックスさん» いつもありがとうございます！遅い更新になってしまいますが、最後までどうかよろしくお願いします。 (2018年7月29日 18時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：山野朱雨 | 作成日時：2018年3月9日 23時
