散ってしまえ。 ページ43
*
桜が散る。
あれだけ淑やかに、美しく堂々と咲いていたはずの桜がほとんどの花びらを落とした。
残っているのは散る寸前の萎れた花弁が少しだけ。
桜色の花びらも青い葉っぱもほとんどついていないガランとした木は、やはり些か寂しさを誘う。
まだ春は始まったばかりだと言うのに、桜が散るのはこんなにも早い。…いや、ここの桜は長く持った方かも知れない。
桜の花は私より一足早く散ってしまったようだけれど、私もいずれああなるのかと思うと目が離せなかった。
散ってしまった桜の花びらはどこへ行くのだろう？
遠い大地？海？それとも地に還るのだろうか。
ならば私の命が散った後、私が生きてきた記憶や痕跡、生きた証はどこに行くと言うのだろう？
否、それはきっとどこにも残らず時間が経つとともに音もなく消えてしまうものなのだ。
私は小さく息を吸った。
こんこん、と子気味のいい音が職員室前の廊下に響いた。
「失礼します。」
そう言って扉を開けると、職員室に先生はほとんどいなかった。
むしろ好都合だ。
きっとたくさん先生がいたら相澤先生だって話しにくいだろうから。
「…未時？」
「………相澤先生、」
私の持っていたはずのものが指の隙間からとめどなく溢れて行く。
元から私の持っているものなんてなかったのかも知れないけれど。
"持っていると思っていたもの"が、溢れて行く。
どれだけ大事に持っていても、どれだけ大事に触れてみても、私の意思とは無関係にソレは簡単に壊れてしまうのだ。
「聞きたい事があるんです」
悲しくなんてない。
なのにこの喪失感はなんだろう。
「…未時の名と『タイムリミット』と言う個性を持った人は今まで誰しも、こうして雄英で保護してもらってたんですよね？」
「……ああ、そうだな」
相澤先生の顔が曇った。
別にこれから言う事に関して攻めたり怒ったりしようとしてるわけではない。
けれど私は真実を確かめにきただけなのだ。
「なら未時の人たちの事、ある程度は知ってますよね。私の家族のことも」
春が過ぎれば夏が来る。
けれど私に夏はこない。
春が過ぎれば私は死ぬ。
夏の蝉の声や日差しを感じる事なく死ぬ。
生きているだけで大切さものが零れ落ちてしまうなんて。
死んだら大切な物が全てなかった事になってしまうなんて。
「私の両親って、死んでるんですか？」
桜なんて散ってしまえ。
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クーニャン(プロフ) - えーと、見失ったので、また見つけたら、連絡します。 (2018年10月13日 20時) (
レス) id: 5eb4794cf2 (このIDを非表示/違反報告)
山野 珠雨(プロフ) - クーニャンさん» この度はお話を読んでいただきありがとうございます！寿命は16歳までの数ヶ月と言うのが正しいです！間違ってしまっている回がわかるのでしたらご報告いただければ修正してまいります！混乱させてしまって本当にごめんなさい！ (2018年10月12日 2時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
クーニャン(プロフ) - 初めまして、こんばんは。わからないところがあるので、質問です。ある回で16歳で死ぬ、残り数ヶ月。というのと、寿命が残り数年と書かれた回があります。どちらが正しいのでしょう？ (2018年10月11日 23時) (レス) id: 5eb4794cf2 (このIDを非表示/違反報告)
山野 珠雨(プロフ) - tukihoさん» はい！頑張ります！！ (2017年12月31日 1時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
tukiho(プロフ) - 山野 珠雨さん» 受験生頑張ってください!!努力は報われます!! (2017年12月31日 1時) (レス) id: 296f9ab165 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：山野朱雨 x他1人 | 作成日時：2017年11月13日 18時
