胸がいっぱい ページ42
朝の教室は騒がしい。
友達と楽しい話をしてる人や、今日の課題について暗い顔をしている人。
「轟くん、ごめんね。返すの遅れちゃって」
茶色い紙袋に形良く畳んだブレザーを手渡した。
水をこぼしただけでクリーニングに出すほどでもなかったから、部屋干ししただけだ。
「ああ、悪い」
クシャりと音を立てて手渡されたそれと席に戻る轟くんを見送った。
「オイ、どけ」
反射的に横にずれれば、いつも通り機嫌があまり良くなさそうな爆豪くんが通った。
さっきのその言葉に、入学式を思い出す。
あれから1ヶ月。
今日も明日も、1秒1秒私の寿命は短くなっていって、それはみんなも変わらない。
変わらないけれど、少し寂しく思ってしまうのはここで暖かさを覚えてしまったからかもしれない。
「…爆豪くん、おはよ」
返事が来るとは思っていないからポソリと呟いた。
爆豪くんは返事をする事はおろか振り返る事もせず、席に座った。
それをわかった上で挨拶をしたはずなのに、少しだけ寂しさが横切る。
「……はよ、」
「…っ、」
一瞬で胸がいっぱいになって、息が止まりそうになった。
振り返る事も目を合わせる事もなかったけれど、その一言が。その声だけが…、
「………う、ん…」
こんな感情知らないのに、爆豪くんにあってからは知らない事ばかり教えられるようで。
こんなにも胸がいっぱいで苦しいのに、なぜこんなにも幸せな気持ちになるのだろう。
私が死ぬ事を、全てなくなってしまう事を『怖い』『悲しい』と思ってしまうのは、爆豪くんのせいでもあるのだ。
自惚れかもしれないけれど、素っ気ないようで、冷たいようで、どこか優しい爆豪くんだってたくさん『暖かさ』を教えてくれた。
時々聞ける爆豪くんのその声が聞けるたび、「やっぱり爆豪くんの声好きだな」なんて。
そして今日が始まる。
大事な大事な、貴重な時間。
死が近づくその一分一秒、どれだけ苦しくても必ず訪れるその”期”に向かって生きるのだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 616人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
クーニャン(プロフ) - えーと、見失ったので、また見つけたら、連絡します。 (2018年10月13日 20時) (
レス) id: 5eb4794cf2 (このIDを非表示/違反報告)
山野 珠雨(プロフ) - クーニャンさん» この度はお話を読んでいただきありがとうございます！寿命は16歳までの数ヶ月と言うのが正しいです！間違ってしまっている回がわかるのでしたらご報告いただければ修正してまいります！混乱させてしまって本当にごめんなさい！ (2018年10月12日 2時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
クーニャン(プロフ) - 初めまして、こんばんは。わからないところがあるので、質問です。ある回で16歳で死ぬ、残り数ヶ月。というのと、寿命が残り数年と書かれた回があります。どちらが正しいのでしょう？ (2018年10月11日 23時) (レス) id: 5eb4794cf2 (このIDを非表示/違反報告)
山野 珠雨(プロフ) - tukihoさん» はい！頑張ります！！ (2017年12月31日 1時) (レス) id: 0e524395ac (このIDを非表示/違反報告)
tukiho(プロフ) - 山野 珠雨さん» 受験生頑張ってください!!努力は報われます!! (2017年12月31日 1時) (レス) id: 296f9ab165 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：山野朱雨 x他1人 | 作成日時：2017年11月13日 18時
