【 2022.2.14 更新】 SECRET GARDEN 〜 Short story 〜 (ページ5)

今日:7 hit、昨日:0 hit、合計:1,621 hit

『 Valentine's Day／S.Ohno 』【2022.2.14】ページ5

❄️

「……………寒っ！」

突然吹いた風の冷たさに、思わず…首をすくめる。

足りなくなった画材を買いに、久々に街へ出たから………都会(まち)のビル風に、改めて驚いた。

「……………早く、帰ろ。」

長居は、無用だ。

画材屋に着いて、必要なものを買ったら………すぐに、駅へと向かう。

・

乗り込んだ車両のドアにもたれながら、後ろへ流れていく景色を眺める。

立ち並ぶビルが、段々減っていって………

潮の香りと、共に…太陽に照らされ、キラキラ輝く海が見えてきた。

・

家に近づくと、漂ってくる………甘い匂い。

・

玄関を、入ると…甘い匂いは、一層強くなった。

「ただいま。」

キッチンを、覗くと……………洗い物をしているAが、振り向いた。

「おかえりなさい。寒かったでしょ？」

洗い物を中断して、あったかい飲み物を準備してくれる、A。

俺の大好きな、ココアの匂いが……甘い匂いに混ざって、香る。

・

「欲しいもの、買えた？」

「うん。」

「そう……よかった。」

「うん。」

柔らかな湯気の立っている、空色のマグカップをテーブルに置いてくれたA。

「ありがと。」

「うん。あ、と……」

マグカップの横に、ゆっくり置かれたのは………可愛いサイズの、ホールのチョコレートケーキ。

甘い匂いの元は、コレだったんだな。

「バレンタイン、だから……あ、でも…ココアとじゃ、甘過ぎるよね？紅茶かコーヒーにすれば、よかった。」

ちょっと凹んでる顔も、好きだなぁ……って、思う。

まぁ………どんな顔してるAも、好きなんだけどさ。

「大丈夫。俺、“スイーツ部・部長”だから。」

メンバーに付けられた“呼び名”を持ち出してみたら………Aに、笑顔が戻った。

あったかいココアと、大事な人の手作りチョコケーキ。

……………うん。

幸せな、一日。

❄️