匂恋。Another story (ページ7)

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___ 紫耀。ページ7

紫耀side

「行ってらっしゃい」

「おう。行ってきます」

結婚したら流石に、本格的に諦めなきゃ…

…もう、ほんまに、Aを忘れなきゃ…

って、本気で思っていた…

…それなのに…

「…A…」

10年も会ってないのに、
後ろ姿で、すぐに分かってしまう。

それほどやっぱり俺は、
Aを忘れていないんや。

だけど、A…変わったな。

昔みたいに、か弱い姿がどこにもない。

母として、妻として、
…廉の女としての強さが一目見てわかる。

…更に、美しくなっていた…

相変わらず、笑顔は変わらないけど。

可愛くて、愛おしくて…仕方がない…

忘れようと決意した後に、
…俺の前に現れるなんて…ズルいわ…

「あ、A、結婚おめでとう」

Aから廉の台本を受け取り、
俺はそう、笑顔で告げた。

また、平野紫耀を演じる。

Aが返事をしようとしたのが分かったけど、
これ以上耐えられなくて…
俺はもう振り返らず、事務所に入った。

１人になると、涙が出そうになった。

今まで、どんな時でも
自分を演じるのには慣れてるはずなのに…
…Aの前で、ボロが出そうになってしまった。

好きって気持ちを、
好きな女目の前にして隠し通すのって、
…ここまで辛いんやな…

なあ、どうしたら忘れられる？

本気で、忘れたい…

それから俺は、忘れたいが為に荒れ果てた。

暇さえあれば、女と遊ぶ。

女がいる飲み会についていく。

変わったなんて言っといて、
結局は俺が一番変わってない。

あの頃と同じ事を繰り返してる。

あの頃、俺が弱くて
女遊びを繰り返したせいで、Aを失った。

女と遊びまくる事が悪い事も、
何かを失うって事も分かってる。

だけど無理なんや。

何かしてないと、黒い感情が出てきてしまう。

平野紫耀で、おれなくなってしまうから…

俺は、10年前からずっと、
弱くてズルくて…情けないままだ。