匂恋。Another story (ページ6)

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___ 紫耀。ページ6

紫耀side

「俺、今から迎えに行ってくる」

他の４人は先に撮影が終わり、
俺と廉だけが残った時に言われた言葉。

「…迎え、って？」

…廉の返答は分かってたけど、敢えて尋ねた。

一か八かで…

「Aんとこ。
こうして、信じられんくらい恵まれてるほど、
キンプリとして、最高の10周年を迎えられた。
そんな記念すべき今日、
Aの元にも行かなきゃダメやと思って」

この10年間。

廉はずっとAを思っていた。

あの、遊び人で女好きだった廉が…
…女1人とも遊ばなかった。

…変わったな、廉も。

いや、変わってないのか。

10年前からずっと、
Aに一途なんやもんな。

…俺は…

「…やっと、決心ついたんやな」

「…紫耀、ほんまありがとな？
この事、誰よりも先に紫耀に報告したかった。
紫耀のおかげでキンプリがここまで来れて…
…俺自身も、強くなれたから…」

廉。ごめんな。

廉はいつでも真っ直ぐで素直に
本音を伝えてくれるのに…

こんな風に言ってくれた廉に、
俺は本音を言わず、…嘘を貫き通すのは
後ろめたくなるけど…

世の中、言っていい事と悪い事がある。

「…別に、俺のおかげやないから(笑)」

俺は変わったよ。

嘘が上手くなった。

演技の仕事を沢山貰えてきたおかげで、
誰にでもどんな時でも、自分を作り…
平野紫耀を演じられるようになった。

廉とAには、幸せになってほしい。

それは、ほんまに思ってる。

せやけど、…俺もまだ、Aが好きやねん。

Aが、忘れられないねん…

おかしい。…ばかみたい。

廉が大好きで、もう10年も会ってない女を
ここまで思い続けているなんて…

廉には絶対バレてはいけない。

廉に、気を使われたくない…

だからまた俺は、
廉にとって良きメンバーの
平野紫耀を演じ、笑った。