匂恋。３ (ページ10)

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___ 愛。ページ10

『…紫耀…』

「…俺は、Aが好きだよ」

少し震えている紫耀の声。

だけど、紫耀の言葉の意味が今は分からない。

『…佐江は…
…佐江を、知ってるんでしょ…？』

紫耀は何も答えてはくれず、
…ただ私を抱きしめる力が強まった。

『…もう…やだ…』

耐えきれなくなり、
紫耀を押して、身体を離す。

紫耀の顔は、申し訳なさそうで…
今にも泣き出しそうな表情。

「…ごめん…」

『…どうして謝るの？
ねえもう全部話してよ。
隠し事なんてしないでよ…』

取り乱してしまう。

でも、どこか冷静な自分。

「…俺、Aが好きやねん。
嘘じゃなくて、ほんまに。
好きで好きでたまらん…
だから…」

『…だから、…なに…？』

「…最近仕事仕事で…
正直しんどくて…
…せやから、他の女に逃げた…」

なんとなくふと、
廉の前言った言葉が頭をよぎった。

『…私、そんなに頼りない？
言ったよね？約束したよね？
何かあったらすぐ私に言ってね、って…』

「…弱いとこ見せたくなかった。
Aが好きな俺でいたかったんや。
…初めて、本気で好きになった人だからこそ…」

廉の言っていた“紫耀がJr.１のカス”って…

女好きとか、欲を満たしたいとか…
…そうじゃなくて…

紫耀は、愛を知らないんだ…

「…アイドルでいる事くらいしか
俺、ほんまに自分に自信ないねん。
弱って、余計ダメダメになってるとこを
Aに見せたくなかった」

『…私をもっと信じてよ…
私、アイドルの紫耀が好きじゃないよ？
紫耀のファンの時も、
紫耀の彼女の時も…
一人の人として、紫耀が好きだったの。
寂しいよ…こんなの…』

紫耀の本音を聞いて、
私の事ここまで思ってくれてるのは
本当に嬉しい事で…

でもだからこそ余計に、辛いんだ…

どんな時も、どんな紫耀でも…
私が紫耀の元にいたかったのに…

「…佐江ちゃんとはな、
共通のスタッフさんを通して知り合って…
何度か会って…」

『…少年収の前、
佐江と私が飲み行った…
あの、私が潰れちゃった日…
全部、話して…』