匂恋。３ (ページ31)

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___ 廉。ページ31

廉side

「…A…
…ちょ…待っててって言ったやん…」

『…遅かったから…
廉に何かあったんじゃないかと思って心配で…』

…怖かっただろうに…

俺の事を心配して来てくれたAが…
…Aのたった一言でも、嬉しくなる。

…こんな状況の時に不謹慎だけど。

『…鈴木さんですよね？』

「…俺の名前…知っててくれたんですか…？」

『…よく、お店来てくださいますし…』

鈴木という男は、勢いよくAに頭を下げた。

「…ごめんなさい。
俺、本当にストーカーとか…
そんなつもりなくて…
…ただ、Aさんが好きで…」

『…私が…好き？』

そいつはゆっくりと顔を上げると、
申し訳なさそうな顔で、こう告げた。

「上司には怒られ、同期には見捨てられ…
だけど…職場で嫌な思いを沢山しても、
Aさんの笑顔を見ると、
嫌な事が全部忘れられて…
…元気になれるというか、幸せでした…」

…あぁ、本気でAが好きなんやなって、
すごく伝わる。

だからか余計、腹が立ってしまう。

「だけど…俺のせいで怖い思いさせてしまった…
彼氏さんに言われて気づくなんて、
俺、本当にばかで…情けないです…
…本当に、すいませんでした…」

もう一度深く頭を下げるこいつに、
Aは優しく笑って…

『…鈴木さん、顔上げて下さい。
私、さっきまでは確かに本当に怖かったけど…
…私の事好きでいてくれたのはすごい嬉しいです。
…すいません。
気持ちには答えられないけど…
…また、仕事で疲れた時はお店に来て下さい』

…A…
どこまでええ奴やねん。

しかも今…
…俺が彼氏だって言われた事には、
否定せんかったよな…？

「…じゃあまた、行っていいんですか？」

鈴木という奴は、
申し訳なさそうで、せやけどどこか
希望に満ちた瞳でAに質問した。

…なんなん、こいつ。

いやいや、ちょっと待ってや。

せっかくさっきのAの言葉で、
心の中で喜んでたのも束の間。