匂恋。３ (ページ28)

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___ 助け。ページ28

コンコン

トイレのドアを叩く音。

…もしかして、…さっきの人…？

涙が出そう。

手も足も震えて、ドアの前でうずくまった時…

「…A…？」

私の名前を呼ぶ優しい声が微かに聞こえた。

…この声…

『…れ、ん…？』

「そうだよ。廉だよ。
A、大丈夫？出てこれそう？」

ゆっくりとドアを開けると
息を切らし、汗もかいている、廉がいた。

『…どうして廉が？
私…店長に電話したのに…』

廉が来てくれて、内心ホッとしたのに
どうしても強がってしまう。

『…こんな…変装もしてないのに
私といるところ誰かに見られたらマズイよ…
私大丈夫だから、廉は早く…』

“帰って”

そう言おうとしたのに、廉に抱きしめられた。

強くて、でも優しくて…
廉の温もりが伝わってくる。

「こんな時まで俺の心配しなくてええから。
…お願いだから、今だけは俺に甘えて？」

廉の言葉に、堪えてた涙が溢れ出した。

「…何もされとらん？」

『…ん、大丈夫…』

私も、廉に腕を回す。

細い身体。

紫耀とは、全然違う…

だけど今は…廉が来てくれて…
廉がいてくれてるおかげで、
さっきまでの恐怖が嘘みたいに無くなっていく。

『…廉、ありがとう…』

廉は何も言わずに、ただずっと…
私の震えが無くなるまで抱きしめてくれた…