2012.06.12 …1 ページ2
それは営業先への外回りの最中
突然降り始めた雨に、抱えた大事な資料が濡れるのを厭って駆け込んだ、小さな古本屋の店先
止む気配を見せないその雨に溜息をつき、暇つぶしにでもと店内に足を踏み入れたのがきっかけだ
薄暗い店内には他に客はいないようだった
きょろきょろと中を眺めながら、ちりりんと可愛い音を立てた扉を、静かに閉める
「いらっしゃいませ」
「あ、すいません。雨が止むまで中見せてもらってもいいですか？」
「どうぞ、ご自由にご覧になってください」
店内の暗さにまだ目が慣れず、店員の顔ははっきり見えなかった
挨拶を交わし、とりあえず自分の濡れた身体が売り物に触れないよう気を配りながら、店内を見て回る
読書は好きだ
本の世界の中に飛び込めば、現実の自分とは異なる、あらゆる人格を有することができる
その世界に自分を投影し物語を動かす遊びは、小さい頃から一人遊びが好きだった人が、一度は通る道だと思っている
独特の匂いのする中をふらふらと歩き回りながら、ふと目に付いた一冊の本
学生時代にずっと好きだった著者の、デビュー作
同じ作品でも、よく書店で見かけるものと違い、その装丁は水墨画をイメージしたもの
当時初版でのみ取り扱われたという、限定物だ
「凄い・・・初めて生で見た」
伸ばしかけた自分の左手を見て、思わず顔をしかめる
大事な資料を守るために仕方なく、数分ほど鞄を抱くようにして雨から庇っていた
そのためスーツの両袖は、目も当てられないほどの濡れ具合だ
こんな手で触れようものなら、ふとした瞬間に垂れた雫で本を台無しにしてしまう
しょうがないな、と手を引っ込める
またいつか、天気のいい日にでも出直そうか
そう思った時だった
「あの、よろしかったらどうぞ」
「え？」
最初の店員の声が背後からしたことに反応して、身体を向ける
「タオルです。随分濡れてらっしゃるみたいですし、風邪引いたら大変ですよ？」
「あ、いや・・・は、はい・・・」
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しゅり(プロフ) - 碧李さん» 私も本当に嬉しいです！ありがとうございます(*^^*)絶賛下書き中の物が幾つかありますので、早くお出しできる様頑張ります！！ (2016年6月23日 22時) (
レス) id: 9a9d81112b (このIDを非表示/違反報告)
碧李(プロフ) - しゅりさん» 本当ですか！？ありがとうございます(^ ^)すごい嬉しい(泣)2人の世界を見守りつつ、しゅりさんの新作楽しみに待ってます( ^ ^ )/■(笑) (2016年6月22日 21時) (レス) id: d8d6835fa4 (このIDを非表示/違反報告)
しゅり(プロフ) - 碧李さん» 感想ありがとうございます！碧李さんの作品を何度も拝見したことがあったので、まさかコメント頂けるなんて、動揺が隠せないです。まだまだ至らない私の作品ですが、この二人の世界を見守って頂けたこと、感謝です！！ (2016年6月18日 15時) (レス) id: 642534afe5 (このIDを非表示/違反報告)
碧李(プロフ) - 完結おめでとうございます。温かみがあり、どこか強さを感じる作品にとても感動しました。すごく胸が締め付けられました。素敵な作品をありがとうございました！ (2016年6月18日 12時) (レス) id: d8d6835fa4 (このIDを非表示/違反報告)
しゅり(プロフ) - えりかさん» 素敵な感想ありがとうございます！この作品を書くに至り、歌詞の持つ意味について色々と気付く点もありました。悲しいだけではなく、何処かに救いがある話しにしたいと思っていたので、そう言っていただけると安心しました。是非、聞いてみてください(*^^*) (2016年6月17日 22時) (レス) id: 642534afe5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しゅり
| 作成日時：2016年5月28日 10時
