＊ ページ38
微かな音が、読書の世界から俺を引き戻した
「勉強中にごめんね、潤。今から大丈夫？」
「あ、うん。すぐ行くよ」
「ありがとう。ポットとかは準備しておいたから、よろしくね」
「はい」
遠慮がちに扉を叩く音に慌てて顔を上げれば、既に十五時を回っていた
扉越しに返事を返してから、栞を挟んで丁寧に本を閉じる
ちゃんと読書灯が消えているのを確認してから、部屋を後にした
客人用のカップ類は、食堂ではなく応接間の隣に作られた給湯室に揃えられている
今日もそのはずだと、庭園から届く賑やかな声を背に、給湯室の扉を開く
思った通り、小さな机の上にはカップが五脚と、お揃いの柄のティーポットが並んでいた
「五人分か・・・、よし」
ケトルに少し多めの水を注いで、火にかける
沸騰するのを待ちながら、数種類の紅茶の缶を手に取った
先生だけなら、少し癖のあるお茶でもいいかもしれないけれど
「ここは無難に、いつものにしとくか」
客人にしか出さない高めの茶葉をティースプーンできっちり計量して、ポットの中に移したところで、お湯が沸いた
まずはカップの一つに半分ほどお湯を注いで、それを他へと移し替えながら、全てのカップを温める
ポットにもお湯を注いで砂時計をひっくり返してから、大きめのトレイに全てを乗せて、給湯室を後にした
.
俺がお茶を淹れにくるって分かっているからだろう、応接間の扉は開けたままになっていた
そこから、楽しそうな笑い声が重なり合って漏れ聞こえてくる
そっと顔を覗かせると、真っ先に神父様が気付いてくれた
「お、潤。お手伝いか」
「あっ、ごめん！重かったでしょ？お湯は先に準備しとくつもりだったんだけど・・・」
「大丈夫、そんなに重くないよ」
ぺこりと頭を下げて中に入れば、先生と神父様と向かい合うようにして、二人の男性が席に着いていた
机の上には、神父様お手製の檸檬のケーキが切り分けられている
甘い茶葉を選ばなくって正解だったなと思いつつ、ちょうど砂時計の砂が全部落ち切ったのを確認して、全てのカップにお茶を注いだ
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しゅり(プロフ) - きよさん» きよさん、最後までお付き合いいただきありがとうございました！ 出来るだけハッピーエンドを迎えられるように、と思っていたので、そう言って頂けて嬉しいです。型破りな自由奔放神父様を感じて頂けてありがとうございます笑 素敵なコメントありがとうございました！ (2021年2月13日 19時) (
レス) id: 9366a89cfd (このIDを非表示/違反報告)
きよ(プロフ) - しゅりさん、完結おめでとうございます。アポロ様どうしたらいいか解らなくなってたんですね。ちょっとツンデレ気味？智くんの神父様は、何にも縛られない智くんならではの素敵な神父様なんだろうなと納得です。潤くんも生まれ変わって、みんな幸せで良かったです。 (2021年2月9日 20時) (レス) id: d9af776466 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しゅり
| 作成日時：2021年1月19日 18時
