＊ ページ41
二杯目のお茶も底が尽きる頃には、俺も緊張することなく会話が出来るようになっていた
雅紀さんも、言葉数は少ないけれど楽しそうな表情で周りの会話に耳を傾けている
「翔さんから聞いたんだけど、潤くんは来年、入学試験を受けるんですよね？」
「あ、はい。そのつもりです」
「じゃあ、将来は御両親と同じ道を歩むんですね。きっと、喜んでいらっしゃるでしょうね」
「そうだと、いいんですけど・・・」
俺の歯切れの悪さに、和也さんと雅紀さんが顔を見合わせる
先生は何も言わず、けれども温かな掌が、膝に置かれた俺の握り拳を包み込むように、そっと重なる
大人達から一斉に届く視線に耐え切れず、思わず俯きながら、気まずさに負けてそっと口を開いた
「・・・狭き門だって、分かってるから。仮に合格出来たとしても、ずっと研究を続けられるのなんて、ほんの一握りだし。確かに、父さんと母さんは優秀な研究者だったんだと思う。でもだからって、息子の俺がそうだとは、限らないでしょ」
「大丈夫だよ」
「雅紀さん・・・」
思わぬ相手からの声に顔を上げれば、俺だけじゃなく、他の三人も少し驚いたような顔をしていた
「大好きなんだよね、天文学の事。だったら、大丈夫だよ。その気持ちがあれば、それを貫き通す覚悟があれば、必ず道は開けるから」
だから大丈夫
そう言って微笑んだ雅紀さんを、和也さんが優しく見つめる
「・・・ありがとう、ございます」
「ううん。応援、してるからね」
「だってさ。頑張れよ、未来の学者先生」
「何それ。神父様まで、やめてよね・・・」
胸の奥が、ぐっと熱くなる
また俯かずにはいられない俺の頭を、神父様が優しく二回、ぽんぽんと叩いてくれた
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 570人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しゅり(プロフ) - きよさん» きよさん、最後までお付き合いいただきありがとうございました！ 出来るだけハッピーエンドを迎えられるように、と思っていたので、そう言って頂けて嬉しいです。型破りな自由奔放神父様を感じて頂けてありがとうございます笑 素敵なコメントありがとうございました！ (2021年2月13日 19時) (
レス) id: 9366a89cfd (このIDを非表示/違反報告)
きよ(プロフ) - しゅりさん、完結おめでとうございます。アポロ様どうしたらいいか解らなくなってたんですね。ちょっとツンデレ気味？智くんの神父様は、何にも縛られない智くんならではの素敵な神父様なんだろうなと納得です。潤くんも生まれ変わって、みんな幸せで良かったです。 (2021年2月9日 20時) (レス) id: d9af776466 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しゅり
| 作成日時：2021年1月19日 18時
