大学2年生・秋 ページ13
「来たで」
ドアを開けると、宇津橋が渋々といった様子で立っていた。
「一番乗りだよ」
「もうちょっと油売ってくるべきやった」
そう言いながらも靴を脱ぎ、 部屋に入ってくる。
ここまで親しくなれた。それでも、これ以上は望めないのだろうか。
まだ私は、宇津橋の影のある表情の理由だって掴めていない。ある程度の予想はできてはいるものの、本人の口から真実を教えてもらいたい。そこまでの仲になりたい。
「大先生」
「え、なに」
試しにフレンドリーにあだ名で呼んでみたものの、あまりしっくり来ない。
「うつ？うっつん？」
「なになに気持ち悪い」
「いや、しっくり来る呼び名を考えてた」
「普通に今のままでええやろ」
どれもあまりしっくり来ない。宇津橋呼びが無難ではある。
「んー…うつくん？うつさん？うつ先生…」
うつ先生。その呼び名が妙にしっくり来た気がした。
「うつせんせい！」
「それはあかん」
即座に否定される。みんな大先生とか鬱先生とか呼んでいるのに。
「じゃあなにがいいの」
「今まで通りでええから」
「親しくなった感出したいの」
「なってへんなってへん」
もう知り合って一年半が経つ。少しずつ距離は縮まっているけれど、さすがにもどかしい。いっそ、告白してしまおうか。
冷たくあしらわれて終わりか、それとも、少しくらいは動揺してくれるか。どっちにしろ、断られる未来しか見えないけれど。
「なに」
宇津橋の顔を凝視していると、少し視線が交わった。片手には箸を持っている。間抜けな顔。
どんどん宇津橋が気になって、今のままで満足できなくなっている。自分でもわかる。
「なんでもない」
でも、今はまだ、言えない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 373人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
千白は山に住む(プロフ) - 凡人さん» ありがとうございます！私もお気に入りで、昔かいたものなのについ番外編を書いてしまいます！そう言っていだだけるのならここに更新しに来てよかったー！と思えます！ありがとうございました！ (2020年6月20日 9時) (
レス) id: 392f79c1f8 (このIDを非表示/違反報告)
千白は山に住む(プロフ) - bhさん» 長らくお返事できていなくてすみません！ありがとうございますー！ (2020年6月20日 9時) (レス) id: 392f79c1f8 (このIDを非表示/違反報告)
凡人(プロフ) - 更新されていてびっくりしました。私が本当に大好きなお話です...ありがとうございます！ (2020年6月5日 18時) (レス) id: 0a526fe040 (このIDを非表示/違反報告)
bh(プロフ) - 大好きです、これからも応援しております。 (2020年3月15日 0時) (レス) id: 204dfe46bb (このIDを非表示/違反報告)
千白は山に住む(プロフ) - 水澪恋さん» 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました！あげて落とす仕様でしたが楽しんでいただけていたら本望です！ありがとうございます、今後もがんばります(*^^*) (2019年10月12日 20時) (レス) id: f80b5e4d2a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
