【d!】白羽の矢【短編集】 (ページ8)

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その邂逅に果てはなく(shp) ページ8

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うっすらと積もった雪に、小さい獣の足跡が続いていた。
恐らく猫だろう、この町では野良猫が我が物顔で闊歩している姿をよく見かける。幸いにも、昔から猫好きの人間が多いため、猫達は駆除されることはなく程々に好き勝手に生きている。猫と人間がうまく共存して生きている町だと思う。

私も猫が好きな人間の一人だ。
通学路にいた、尻尾の先が二又になっていた黒猫とよく遊んだことを思い出す。あの子は私の自転車のヘルメットに入るのが好きで、ショッピ、と呼ぶとにゃあと可愛らしい返事をしてくれる賢い子だった。それに、野良とは思えないほど美しい子だった。あの子のアメジストが埋め込まれた様な瞳が私は大好きだった。しかし、ショッピはある日を境に姿を見せなくなった。事故に遭って死んでしまったかもしれないと、酷く泣いた覚えがある。
この町では、沢山の猫が生まれ、そして死んでいく、そういうものだと成長するにつれ学んでいった。

明日は部活もなく、久しぶりの完全な休日になっている。少し遅い時間ではあるが、好奇心の赴くままに、この足跡を辿っていこうと決意した。あわよくば、猫の集会場なんかを見る事ができるかもしれない。

幸いにも、足跡は地面から途切れることはなく続いていた。流石に塀の上や軒下にまで追うわけにはいかない。右を曲がって左に行って、それから真っ直ぐ、といった感じでぐにゃぐにゃと道を進んでいく。その内、人の気配も少なくなり、気がつけば他の人間の足跡もなくなり、猫の足跡と私の足跡だけが雪の上に続いていた。

それから暫く歩いたが、一向に足跡が途切れる様子はない。街頭の数も減り、辺りは暗闇に包まれている。時計を確認すると、追いかけてから1時間ほど経っていた。もうそんなに経っていたのか、流石にここまでかな、といったところで、遠くの方から微かににゃあ、という声が聞こえてきた。
こっちにおいでよ、と誘うようなどこか懐かしくも可愛らしい声に、私から帰宅するという考えは一掃される。催眠術にかかったような、もしくは狐に化かされているような夢見心地な気分と共に、一刻も早く猫に会いたい、という感情で支配された。

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