ヴァンパイアと少女の昔話…【蒼井翔太】

第30話 ★ 嫌われ者… 【過去】 ページ33

翔太｢…。｣

俺は静かに病室に入った。

｢こ、来ないで…！｣

女性の1人が怯えながら震えていた。

｢な、何が目的だよ！！｣

男性もだ。

｢…こんな血、いらないでしょ！？なんで来るの！？｣

恐怖に怯えきって冷めた目で俺のことを見る。別に、構わない…。

翔太｢…昨日は、大変申し訳ありませんでした。｣

深く、深く、ただただ深く頭を下げた。

｢｢…え？｣｣

俺は男性のもとに行った。

｢な、なんだよっ！？｣

翔太｢…大人しくしてください。｣

俺は男性のデコに手を当てた。

｢…ひっ…！｣

そっと、手を離した。

｢…あ、れ…？傷が…。｣

男の傷は消えた。折れた腕も、擦り傷も、頭の傷もすべて。

｢…腕も、治ってる…？｣

翔太｢…。｣

俺は女性2人も同じように傷を治した。

翔太｢……用はこれだけです。すみませんが、車を出して頂けますか？｣

俺をここまで連れてきてくれた男性に声をかけ、また街まで車で送ってもらうことにした。

街人｢さっきのは…。｣

翔太｢俺は、化物だ…。あれくらいのこと、できる。…俺はな…？昔はあんたらと同じ、人間だったんだ。｣

街人｢え…？｣

翔太｢…このヴァンパイアというものになってから、もう200年…いや、もしかしたらそれ以上かもしれない。もう、この体のままずっと死ねないんだよ。…だから、みんなには死んでほしい…。｣

街人｢…！？｣

翔太｢ゆっくり、ゆっくり…生まれて、子供になって友達作って…大人になって、就職して結婚して子供を産んで…その子供を見守って、最後、幸せだって思いながら、死んでほしい…。俺は、もうどれも、できないから…。｣

街人｢ヴァンパイアは、一生命が尽きない…と？｣

翔太｢この体になってしまって…気持ち悪くて…人間の血を吸わないと生きていけないなんて…。何度も何度も刃を自分に向けて振りをろしたり、海に潜って見ても、何故か、意識を失って倒れているだけで…死ねなかった…。…みんなは、いいよね…。死ぬ時は、見送って、見送られるんだから…。でも、俺は…見送って…見送ってｯ…！見送ることしかできなくてｯ…！｣

ずっと…周りの人はいなくなるのに、俺だけいつも一人になる…。それかとても怖くて…いつからだろう、もう、誰とも関係を築きたくなくて…森に引きこもったのは…。

気がつくと、車の中には俺の泣き声以外、何も聞こえなくなっていた。

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