Lowenzahn〜レーヴェンツァーン ページ7
「やっぱり冗談言う相手は、お前が一番だな。あきやんには通じなくて……」
若干汚れた白衣のポケットに手を突っ込み、苦笑を溢す。
椚先生か。確かに、彼が冗談を冗談で返す姿は想像出来なかった。
「そういえば佐賀美先生。理事長室の場所はご存知ですか」
本来の目的を思い出し、尋ねてみる。
「ああ、父さんに用事ってか。理事長室なら普通科だぞ」
普通科?そんなの聞いてない。
そういう大事な事は先に言ってくれ、父さん。わざわざアイドル科まで来たのは無駄足だったじゃないか。
「どうりで地図に無いわけです」
「はは、ご苦労さん。それじゃあ、俺はバレないようにサボるっていう仕事があるから。じゃあな、カウンセラー」
「知ってたんですね。これから宜しくお願いします。……椚先生に会ったらチクりますからね」
「相変わらず手厳しいな」
佐賀美先生と別れ、少し離れた場所に建った普通科に足を踏み入れる。
何で科によって校舎を変えるのだろう。面倒この上ない。
アイドルともなるとファン事情など面倒事がつきまとうものなのか。
……あ、僕が勤めていた総合病院も、科によって棟が違っていた。仕方ない。認めてやろうじゃないか。
さっき見たものとは少し異なる形状をした校内の地図を探すと、一階のフロアに理事長室なるものを発見した。
ここから、左へ直進、突き当たりをまた左、4つ目の部屋か。行ってみよう。
廊下は、朝という事もあり、登校してきた生徒が思ったより多く行き交っていた。アイドル科よりも在籍生徒が多いから、当たり前か。
朝から元気な高校生達を尻目に、目的の場所へ向かった。
ここを左だったか。
突き当たりに差し掛かったので、記憶を手繰って曲がろうとしたら、体格の良い若い男性とぶつかってしまった。
「ああ、すみません」
僕は咄嗟に謝った。完全に僕の不注意だ。
その男性は教師なのだろう。彼が持っていた出席簿的な物を落とされたので、拾って差し上げた。
「いえ、ありが……あ?その目……もしかしてジゼルか……?!」
「ん……?あ、勇我だ」
「ああ!俺だ!まさか此処でお前に会えるなんてな!!」
久遠勇我。
自転車通学で嫌味を言う件の彼だ。
彼は僕の同級生で、シュトラのタンポポ、Löwenzahnだった。
彼の言うとおりだ。まさか卒業後も会えるだなんて。
「勇我、先生になったんだ……」
「体育教師だがな?」
「あ〜……なるほど」
「あ?馬鹿だって言いてえのかよ?!」
「僕、納得しただけなんだけど」
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流離いのsecret(プロフ) - ぎゃぁぁ本当だ……!ご指摘ありがとうございます! 細かいところまで読んでいただき嬉しいばかりです笑 (今後気を付けます笑) (2019年7月13日 22時) (レス) id: 451ca50573 (このIDを非表示/違反報告)
しか - ごめんなさい。「混沌」でした!! (2019年7月13日 21時) (レス) id: 3bc0209618 (このIDを非表示/違反報告)
しか - 「悩み」の話の「敬人」が「敬斗」になってますよ(コソッ面白かったです。これからも頑張ってください! (2019年7月13日 20時) (レス) id: 3bc0209618 (このIDを非表示/違反報告)
流離いのsecret(プロフ) - ありがとうございます!頑張ります!(語彙力ない)笑 (2019年6月24日 14時) (レス) id: 451ca50573 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん - 面白いです(語彙力ない) (2019年6月23日 21時) (レス) id: 19c16fa711 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:流離いのsecret | 作成日時:2019年5月2日 14時