おあずけ ページ46
ある意味の修羅場である。
どうやって避けるのが正解だ。はっきり拒んで傷付けたり泣かせたりなんてしたらもう最悪だ。極力優しく、を心がけ、やっと出てきた言葉は
「まだ、おあずけだよ。君が二十歳になってから。ね？」
これでどうだ。
傷付けない、拒まない、否定しない。それでもって諦めてくれる確率も大幅増加。
「…………そっか」
ヤバい、俯いてしまった。声も張りがなく、肩も落ちぎみである。傷付けた、絶対傷付けた。申し訳ない。でも僕悪くない。成人として善処を尽くした結果だ。
「……じゃあ、待っててね。俺が二十歳になるまで」
あれ？
顔を上げた凛月くんはどんな暗い顔をしているのかと思いきや満面の笑みではにかんでいた。
「拒絶される覚悟で言ったのに。……本当に優しい」
笑みといっても、明るいものではない。
目口は笑みの徴候を表し、頬もほんのり赤みを差している。それなのに異質な引っ掛かりを感じる。先程までの愛らしさはもうそこには残っていなかった。
「ふふ……♪早く大人になりたいな」
彼の赤い瞳は僕しか映していない。背筋が凍るような感覚が僕を襲った。耐えられなくて身動ぎをすると彼はより深く笑みを刻みこんだ。
心臓が活発に鼓動する。じわじわとアドレナリンが分泌されている。久し振りに恐怖という感情が身体を支配した。
「はは、焦らなくても必ずなれるよ。死なない限りは」
でも表面はいつもの『僕』のまま。
それから、僕らは何気無い話を重ね時を過ごした。僕は気が気じゃなかったが。冷や汗をかく内心は抑え込み、必死に取り繕って会話をしていた。情けない。
面談終了の時間が訪れ別れる際に、すこぶる残念そうな顔をされた。
しかし、『また話そうね』と小指を差し出すとそっと手に取られ軽いキスを受けた。『じゃあね』と手を振る凛月くんは小悪魔の笑みを浮かべていた。高校生怖い。
その後、今回のカウンセリングについてどう資料を誤魔化そうかパソコンを打ちながら迷っていると、今日10回目くらいのチャイムが声を上げた。
腕時計を見ると、もう昼食時だ。購買で適当なパンでも買って食べようかと医者にしては不養生な事を考えていたところ、スマホにシークから着信が来たようだ。
『兄さん、昼空いてる？
良かったら一緒にゴハン食べよ！
来れたら3Bに来てね！(†ω°)ﾉｼ』
可愛い、弟可愛い！
『勿論！購買によってから行くね』
シークに即レスをして、執筆していた資料を一旦保存し、早速購買へ向かった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 66人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
流離いのsecret(プロフ) - ぎゃぁぁ本当だ……！ご指摘ありがとうございます！ 細かいところまで読んでいただき嬉しいばかりです笑 (今後気を付けます笑) (2019年7月13日 22時) (
レス) id: 451ca50573 (このIDを非表示/違反報告)
しか - ごめんなさい。｢混沌｣でした!! (2019年7月13日 21時) (レス) id: 3bc0209618 (このIDを非表示/違反報告)
しか - ｢悩み｣の話の｢敬人｣が｢敬斗｣になってますよ（コソッ面白かったです。これからも頑張ってください！ (2019年7月13日 20時) (レス) id: 3bc0209618 (このIDを非表示/違反報告)
流離いのsecret(プロフ) - ありがとうございます！頑張ります！(語彙力ない)笑 (2019年6月24日 14時) (レス) id: 451ca50573 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん - 面白いです(語彙力ない) (2019年6月23日 21時) (レス) id: 19c16fa711 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：流離いのsecret | 作成日時：2019年5月2日 14時
