ライオン ページ30
「有名な童話に、オズと魔法使いというものがあるだろう。それだよ」
臆病なライオン。
彼も勇気を願った。
「あ、それなら読んだことがあります！面白いですよね」
創くんは頷いた。
「うん。ライオンになれば、いつかドロシーのような人に出会える。そのドロシーに引っ張ってもらって、やがて君は勇気を手に入れる」
かつて小さな弟妹達に絵本を読み聞かせてあげた時の様に、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「でも……」
視線を落とし、不安げな表情を浮かべる創くん。
「うん？」
「それでは、現状と変わらないんじゃないかって……」
「もう君にはドロシーがいるのかな？」
「はい」
なるほど。つまり、彼は既にドロシーに同行中のライオンだったわけだ。
物語の中ではどうやって勇気を取り戻したんだったかな。肝心な部分を覚えていない。引用によるアドバイスが出来ないじゃないか。
過去の事例や物語になぞらえて説明するのは、理解しやすいので説得には効果的だというのに。
詰めの甘い奴だな。僕は。
「それなら、君はライオンからドロシーに生まれ変われば良いんじゃないかな？」
「僕が、ドロシー？」
「そう。もし君が言うドロシーが、道を迷ってしまったら、君がドロシーになって先導するんだ」
いつものアイドルスマイルで平然を装っているが、内心は大暴れである。
僕がドロシー。
やめてくれ、妄想が止まらない。
白いふわふわのパニエワンピ。
腰には大きな水色のリボン。
トトの犬種は揃ってふわふわなトイプードルか。
「いや、君の親友に限らず、困っている人がいたら、惜しみ無く救いの手を差し伸べるんだ。最初はちょっとずつで良い。ちょっとずつ、羽化していくと良いよ」
歩く度に揺れるフリル。陽の光に映えるさらさらな髪。この子にはゴシックなんて似合わない。無垢は無垢のままで。
ああ、Aは例外だよ。
Aは真っ白な無垢だが、似合う服がゴスロリだという事は譲れない。
──いや、落ち着け、僕。
「ちょっとずつ……」
彼は噛み締める様に呟き、目を閉じた。
生まれ始めた気持ちを整理しているのだろう。
僕はその様子を黙って見ていた。
10秒くらい経って、創くんは目を開いて僕を見た。最初会った時とは、なんだか違う瞳をしている気がした。物質は変わらないはずなのに。
「ジゼルさん」
「なにかな？」
「ありがとうございました！」
すっと立ち上がり、勢いよく頭を下げる。
上がった顔は、とても清々しかった。
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流離いのsecret(プロフ) - ぎゃぁぁ本当だ……！ご指摘ありがとうございます！ 細かいところまで読んでいただき嬉しいばかりです笑 (今後気を付けます笑) (2019年7月13日 22時) (
レス) id: 451ca50573 (このIDを非表示/違反報告)
しか - ごめんなさい。｢混沌｣でした!! (2019年7月13日 21時) (レス) id: 3bc0209618 (このIDを非表示/違反報告)
しか - ｢悩み｣の話の｢敬人｣が｢敬斗｣になってますよ（コソッ面白かったです。これからも頑張ってください！ (2019年7月13日 20時) (レス) id: 3bc0209618 (このIDを非表示/違反報告)
流離いのsecret(プロフ) - ありがとうございます！頑張ります！(語彙力ない)笑 (2019年6月24日 14時) (レス) id: 451ca50573 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん - 面白いです(語彙力ない) (2019年6月23日 21時) (レス) id: 19c16fa711 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：流離いのsecret | 作成日時：2019年5月2日 14時
