悩み 2人目 ページ27
金曜日。例の小会議室で僕は人を待っていた。
1-B 朱桜司くん、だそうだ。
珍しい名字だが、どこかで聞いたことがあった。父さんの声が脳内で甦る。父の知り合いの息子さんだろうか。
「失礼致します」
扉が丁寧なノック音を奏で、大人顔負けの敬語を使いこなした赤髪の美少年が入室した。
こんにちは。また、いつもの笑顔で迎え入れる。司くんは、少しぎこちない笑顔を浮かべた。きっと緊張しているのだろう。
「今日は良い天気だね。あ、そこにかけて」
椅子に手を差し伸べると司くんは素直に返事をして静かに座った。育ちの良い子だということは直ぐに分かった。
そういえば、かなり前の話、Aに「腰をかける」という表現が伝わらなかった事があったな。
「かける」は九九以外にも意味があるのだ、と国語辞典を広げて教えたのは今でも覚えている。
僕はデスクの鍵を開け、例の生徒ファイルを取り出し、司くんの正面に座った。
「さて、と……。お悩みを聞く前に、まずは自己紹介だね。僕は青海ジゼルと言います。よろしくね」
「はい、朱桜司と申します。よろしくお願いいたします」
なるほど。淀みない喋り方からして普段から敬語キャラなんだな。クロウと一緒。
司くんが、自己紹介をした時あたりから僕を見てはソワソワしていた。
何かを言いかけては口をつぐんで。
生徒に心を開いてもらうためにやろうと決めた相談前の雑談が弾んできたところで、ようやく司くんは意を決した。
「あ、あの……もしかして、BlumenstraußのRosen様ですか？！」
もしかしたら僕より流暢かもしれない素晴らしい発音で言ってくれた。
「うん、そうだよ。まあ、今はマイクよりメス持たされる事の方が多いけど。君もいずれは刃物を持つようになるかもしれないね」
ああ、またやってしまった。
気付くと僕だけ笑っている。こういう陰湿な冗談は、人を選んで発言するべきだという事を、今までの人生で何度も学んできたのに。
全く、僕というやつは。
「はは、何でもないよ。そう、僕はRosen。『オレンジ色の薔薇の花言葉は……魅惑…』」
司くんの唇を人差し指の腹で軽く触れ、左目を閉じるウインクで微笑む。黒い瞳と艶かしい声で相手を絡めとるように呟いた。
巧く誤魔化せただろうか。
「m……Marvelous！！ああ、まさか本人に出逢えるなんて、思ってもいませんでした……っ！」
口元を、信じられないというように手で覆い、先程までの緊張とはまた違った表情で僕を見た。
何だこの子、可愛いじゃないか。
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流離いのsecret(プロフ) - ぎゃぁぁ本当だ……！ご指摘ありがとうございます！ 細かいところまで読んでいただき嬉しいばかりです笑 (今後気を付けます笑) (2019年7月13日 22時) (
レス) id: 451ca50573 (このIDを非表示/違反報告)
しか - ごめんなさい。｢混沌｣でした!! (2019年7月13日 21時) (レス) id: 3bc0209618 (このIDを非表示/違反報告)
しか - ｢悩み｣の話の｢敬人｣が｢敬斗｣になってますよ（コソッ面白かったです。これからも頑張ってください！ (2019年7月13日 20時) (レス) id: 3bc0209618 (このIDを非表示/違反報告)
流離いのsecret(プロフ) - ありがとうございます！頑張ります！(語彙力ない)笑 (2019年6月24日 14時) (レス) id: 451ca50573 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん - 面白いです(語彙力ない) (2019年6月23日 21時) (レス) id: 19c16fa711 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：流離いのsecret | 作成日時：2019年5月2日 14時
