夢 ページ22
白くやわらかくて美しい指が僕の頬を撫でた。
その指の持ち主は優しく笑い、そっと手を離す。あたたかくて懐かしい微笑みだった。
今はもう二度と見れない微笑み。
僕とその人以外に何も無い真っ白な空間。
その人のお気に入りだった、清楚な白いロングスカートが微風になびく。
消えないでほしい。
目覚めたくない。
幽かな意識が、そう願った。
僕は手を伸ばす。薄らぐその人のカゲに。
まだ、人の死に触れたことのない小さな手が掴んだのは、歪な愛情のカタチだった。
僕は泣いていた。
水分とナトリウム、リゾチームにアルブミンやグロブリン等が瞳から流れ出たのだ。
自分の中に溜め込まれたストレスを吐き出すために、僕はきっと泣いたのだ。
──そんな幼い日の経験を、僕は滑稽にも夢に見た。
瞳に熱いものを感じて、はっと体を起こす。
僕はどうやら看病中に眠ってしまったらしい。
シーツにはじんわりと濡れた痕がある。
これが、僕の流した涙か。
僕は消すように痕をなぞった。
「お、おはようございますっ」
明るくも、緊張をはらんだ声が降りかかった。
「ああ、ごめんね。僕が眠ってしまっただなんて」
僕は壁に掛かった時計を見た。
ここに来てから30分くらい経ったか。
という事は、只今5時間目。
生徒は勉学に励んでいることだろう。
後ろの天使が眠っていたベッドを確認する。
カーテンは開き、新品のように綺麗に整頓されていた。彼(彼女だったかもしれない)が居た形跡など一つもない。
もしかしたら、かの天使も僕が生み出した夢の民だったのかもしれない。
残念なことだ。
願わくば、もう一度会えることを。
「スバル君、あれ以来調子はどうかな」
「あ、だ、大丈夫、です！」
スバル君は目を泳がせながら声を張って言った。
「ふふ、緊張しなくて良いよ。敬語も使わなくて良い。そうだ、僕をシークだと思って話してみたらどうかな」
「き、キチ先輩……？」
「え、シークって学校でキチ先輩って呼ばれてるの？……ふふ、あっははは！」
キチ◯イは差別用語だし、良い意味も含まれていない語句だが、そこに軽蔑の念は微塵も感じられなかった。
学校には馴染めていると推測される。
しかし、僕にはその安堵よりも、的を射たニックネームの秀逸な面白さ方が勝った。
「ねぇ、シークの話、もっと聞かせてくれるかな。弟の学校生活、知っておきたいんだ」
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流離いのsecret(プロフ) - ぎゃぁぁ本当だ……！ご指摘ありがとうございます！ 細かいところまで読んでいただき嬉しいばかりです笑 (今後気を付けます笑) (2019年7月13日 22時) (
レス) id: 451ca50573 (このIDを非表示/違反報告)
しか - ごめんなさい。｢混沌｣でした!! (2019年7月13日 21時) (レス) id: 3bc0209618 (このIDを非表示/違反報告)
しか - ｢悩み｣の話の｢敬人｣が｢敬斗｣になってますよ（コソッ面白かったです。これからも頑張ってください！ (2019年7月13日 20時) (レス) id: 3bc0209618 (このIDを非表示/違反報告)
流離いのsecret(プロフ) - ありがとうございます！頑張ります！(語彙力ない)笑 (2019年6月24日 14時) (レス) id: 451ca50573 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん - 面白いです(語彙力ない) (2019年6月23日 21時) (レス) id: 19c16fa711 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：流離いのsecret | 作成日時：2019年5月2日 14時
