第一章 始まり 第九段落目「かすがい鴉不仲隊」 ページ8
「……もう落ち着いた?」
僕がそう言っても、鴉はプンプンして、
「マダニ決マッテイルダロウ!イイカラ放ットケ!」
とそっぽ向いて言った。
―結局あの舌戦、最終的には僕が勝った(的な)ことになって、それが悔しいのか、それとも散々言われて苛立っているのか、とにかくさっきから機嫌が悪い。
あまりに騒ぎになり過ぎたから、一度二人とも落ち着こうって話になったけど、結局ちゃんと落ち着けているのは僕だけ。
この鴉、いつもは上からたくさん言ってくるけど、説得力とか、冷静さとか、
そういう能力は僕の方が断然上みたいだ。
「ごめんって。確かに“ちょっと”言い過ぎたことは認めるよ。
今日は僕が降参してあげるから、そろそろ機嫌直しなよ。」
「嫌ダッ!!」
さらに向こうへ、鴉はそっぽ向いた。
そんな姿だけ見てると、まだ飛ぶことを学んだばかりの雛みたいで、大の大人が恥ずかしくないのか…と一瞬思った。
(年齢は人間でいう35歳くらいらしい。)
「君が怒るのも勿論分かるよ。
僕、君のこと
能無し鴉って言ったし、」
ムカッ
「欠点だらけの恥さらしとも言ったし、」
ムカッ
「傲慢過ぎて手に負えないお荷物とも言ったけどさ。」
ムカムカッ!
「でもそれはあくまで事実のことで―」
「モウ分カッタカラ喋ルナ!鬼狩リノ恥サラシ!」
鴉は、それだけ言ってまたそっぽ向いた。
「………」
駄目だな。何言っても聞かない。
「はぁ……」
素っ気ない鴉の態度に、僕ももう諦めて、
任務だと伝令を受けるまでの間、名前もわからない街をさまよい歩いた。
「カァー!カァー!カァー!」
どこかの電柱にとまっている鴉がそう鳴くと、(こっちの)鴉が急に止まった。
「……?どうしたの?」
僕がそう聞くと、鴉は静かに言った。
「仕事ダ、無一郎。
本部ヨリ伝令ヲ伝エル。西ノ街ヘ行ケ。ソノ街ノハズレニアル屋敷ニ、鬼ガ潜ンデイルトイウ情報アリ。既ニ三名ノ隊士モ到着シテイル。直チニ向カエ。
ダソウダ。」
いつもの大声じゃないことを考えると、まださっきのことを引きずってるみたいだ。
※度を越えて自分の悪口を言われると、なかなか立ち直れない系・毘和
「因ミニ、「既ニ三名ノ隊士モ到着シテイル」トイウコトハ、今回ハ合同任務ニナルゾ、無一郎。」
「合同任務?」
「アア。稀ニダガ、誰カト協力シテ任務ヲ行ウ時ガアル。ソレガ「合同任務」ダ。
マァ、合同ノ方ガ仲間ト協力スルコトヲ学ベテ、自分ヘノ負担ガ減ルトイウ美点ガアルガ、
同時ニ相手ヲ助ケナガラ戦闘スルトイウ欠点モアル。」
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作者名:悲羽理 Hibari | 作成日時:2020年6月28日 5時