徒歩10分3 ページ18
センラside
僕が動揺している場合ではないと思い、取り敢えず2種類ある錠剤を1錠ずつ取り出して手渡す。Aちゃんは震えている手で受け取り飲み込んだようだった。
しばらくは座り込んだままだったが数分で立てるようになり、「1人で歩けます」と言ったし、もう家もすぐそこだったから歩いて帰ることにした。
でもやっぱり途中でフラついたりフェンスを伝って歩いていたりしたため、心配だったから「僕の腕に捕まって、体もたれかけて。」と言うと少し顔を赤くして「すみません」と言いながらもたれてきた。さっきは3人で支えたから軽く感じたのかもしれないと思ったけど、実際1人で支えても軽かった。
一体この子は普段どんな生活をしているのだろうか?そう思わずには居られなかった。
「ほんとにごめんなさい、何回も迷惑かけて。明日にはすぐ出て行くので、許してください…」
苦しそうなのに話している彼女の目は潤んでいて、今にも壊れてしまいそうだった。
「何で勝手に迷惑やとおもってるん?
センラは全然迷惑なんて思ってないで?
こんな状態で帰すわけにはいかんやろ。
どうせおうちにも帰らんとおるんやろ?」
自分をただひたすらに責め続ける彼女にイラッと来て思っていることを一気に口に出してしまう。
「ほんとに明日もお邪魔してもいいんですか?」
「加奈ちゃんと話して決めや。センラでは居ってくれた方が嬉しいし…」
勢いに任せて若干告白じみた台詞を言ったことに気付きハッとする。
が、照れ隠しをする前に玄関に着いていた
一刻も早くAちゃんを休ませたくて、まだよろよろしている体を更にもたれかけさせて半ば引っ張る感じでリビングまで連れていく。
ドアを開けると4人が一斉にこっちを向いて、僕とAちゃんの体勢に視線を注いだ後、息苦しそうな姿を見て、加奈ちゃんと坂田が駆け寄る。
「またか…ごめんね、A。私も行った方が良かったか…」
「加奈ちゃんが気にすることじゃなよ。
私が勝手になったんだから」
弱々しく微笑む彼女は「肩、借りるよ」と言って加奈ちゃんの肩を持ってソファに座る。
座ったところですかさず坂田が脈をとり、熱を測る。
「もう今日はご飯食べてすぐ寝るんやで。約束な?」
看護師さん独特の優しい話し方で言うと、続けて質問を投げ掛けた。
「かかりつけの病院、どこ?」
Aちゃんは一瞬息を呑み、加奈ちゃんの方を見て、そのうち諦めたように言った。
「○○病院、精神科です」
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シロマリ(プロフ) - ハチミツさん» ありがとうございます!ハチミツさんの作品楽しく読ませて頂いているのでとても嬉しいです!頑張ります! (2019年3月25日 23時) (レス) id: 733482b1be (このIDを非表示/違反報告)
ハチミツ(プロフ) - コメント失礼します!とても面白い小説なので、更新楽しみにしています!これからも頑張ってください! (2019年3月25日 22時) (レス) id: 9c73988fd7 (このIDを非表示/違反報告)
シロマリ(プロフ) - 月雨さん» 訂正ありがとうございます!頑張ります! (2019年3月24日 19時) (レス) id: 733482b1be (このIDを非表示/違反報告)
月雨(プロフ) - おこずかい× おこづかい○ですよ!更新頑張ってください! (2019年3月24日 19時) (レス) id: 13ee1e808b (このIDを非表示/違反報告)
シロマリ(プロフ) - まりあ 裏千家さん» ありがとうございます!頑張ります! (2019年3月10日 22時) (レス) id: 733482b1be (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シロマリ | 作成日時:2018年12月9日 21時