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荒廃したこの世界では、今日食料にありつけるかどうかが命取りになる。
食料と銘打っても、実際ほとんどは栄養素のみを取れるスライムみたいなゼリーだけど。
最近はそれすら少なく、毎日次のご飯のことばっかり考えてた。自然の食事、料理だったり、旬とか、文化食とか、そういうのはもう存在していない物だと知っていた。
7、8年前くらいまではかろうじて、3ヶ月に1回くらい食べられたけど、今は耳にすらしない。
「…ヤー、もう、何もないんだけど…？」
「…自分で探せば」
「……。…ここ最近まともに食えてないんだよ。1個食べるのさえダメって言いたいの？」
「うるさいな、しょうがないだろ…」
倉庫から出てきたチャンビニヒョンの力ない声は、もういつも通りのことになってしまった。
最初はあのスライムゼリーに誰よりも嫌悪感を示していたというのに、今ではそれを血眼になって探さなきゃならないんだから、無理もない。
ボソボソ喋るビニヒョンにリノヒョンも毒づいてはいるけど、勢いにかける。昔はもっと、と思うと、ため息が出る。
食糧難が深刻化するにつれ、僕らの関係に細かなヒビが入っていくのに、多分みんな気づいていた。
空腹で、いらいらして当たってしまう。分かってはいても、どうにもならなかった。徐々に食事には笑顔がなくなった。パックに詰められたまずいゼリーを吸うだけなんだから、楽しみなんてひとつもなかった。
食事には全員が揃わなくなって、会話が減り、ついにはバラバラになってしまった。たまに誰かが来ては、ふらっと居なくなって、の繰り返し。
「…チッ……くそ…」
ガン、と力なく椅子を蹴ると、ビニヒョンは出ていってしまった。
リノヒョンも髪をぐしゃぐしゃ掻いて、ため息混じりに立ち上がる。
「…イエナ、また後でな」
「…うん」
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作者名：生姜焼き太 | 作成日時：2024年1月16日 22時
