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また、テーブルに座っている。


テーブルには、食べかけのビスケットが2枚、小さな皿に入っている。ああ片付けるのを忘れてたな、とぼんやり思った。


景色は昨日と変わらず、深い霧の中である。薄暗い視界の中、私は瞼を閉じてそっと耳を澄ました。






昨日も同じ夢をみた。

あの時はテーブルに座っていたからたまたまかと思ったけど、そうじゃないらしい。明晰夢の一種だろうか。でもそれにしては、やけに頭が回らない感じがした。

昨日はたしか、最後。夢の最後で、人の手が見えた気がする。ともすれば、同じ場所なら、霧で見えなかっただけで実は人がいるのかもしれない。


「……、………」



「…。…」




聞こえる。微かに、呼吸音がする。
やはり人がいるみたいだ。とはいえ夢だから、実はいませんでしたなんてこともありえるけど。

…どんな人だろう。お母さん?お父さん?おばあちゃん?まさか私自身だったりして。







ゆっくり目を開いて、深く呼吸をすると、私はテーブルに身を乗り出した。






「…あの。」







フ、 と霧の向こうに、黒い髪が浮かび上がった。






「っあ、あ。……」


ぷちんと音がしたみたいに目が覚める。

ガバッと体を起こすと、布団の埃が光にキラキラと舞っているのが見えた。
光がカーテンから細く差し込み、空気の冷たさを肌に感じる。
鳥の囀りが遠くに聞こえてくる。静かな朝の風景とは裏腹に、私の心臓は嫌に拍動を速めていた。



やっぱり、テーブルの向こうに人がいた!

前より進展しているみたいだ。まあ、動いたのは私だけど、でも、確かに、…霧の向こうに、人がいた。
予知夢というやつだろうか。もしかして、寝ている間に強盗でも入っていて、それを無意識に捉えているとか?もしくは、幽霊?地縛霊?まさか、誰か身の回りの人の死期が近づいているとか?


嫌な想像だけがどんどん膨らんでいく。私はドキドキと鳴る心臓を抑えつつ、パジャマのまま寝室をでた。



もちろんのこと、リビングにもテーブルにも人っこ一人いるわけがないのだけれど。


何にも置いてないピカピカのテーブルに光がさして、木目の波が筋になって光を反射する。一人で座れば、大きすぎるくらい大きなテーブル。昔は10人くらいで座ったのだろうか。

…まあ、独り身なのは決定事項だから、そんなこと考えたって仕方ないか。




「…はあ。なんなんだろ。変なことばっかり考えてしまう」



でも、せっかくだから防犯カメラでもつけてみようかしら。

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作者名:生姜焼き太 | 作成日時:2024年1月16日 22時

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