3 ページ5
*
霧の立ち込める中、巨大なテーブルに一人で座っている。
霧のせいで周りはほとんど見えなかった。テーブルの奥に、トッポッキとカップ麺がボンヤリと見えるのみ。ふわふわとどこか落ち着かない感覚がする。ただひっそりと、自分の呼吸だけが響いていた。
ぼうっとしてテーブルを見ていると、ふとあることに気がついた。
向かいに、人の手が見えたのだ。
「………あ、」
ガクッと身体が反応して、目が覚める。と同時に、腰に鋭い痛みが走った。何事かと思ったが、そういえば私は椅子に座ったまま眠ってしまったのだ、と思い出す。
時計を見ると、午前11時を回っていた。昨日片付けが終わったのが午後6時くらいだったから、かなり長く眠ってしまったらしい。
「はあ…よく、寝た。」
椅子から立ってぐぐっと伸びをすると、身体中がバキバキ嫌な音を鳴らしながら動き出す。今日もやることは沢山ある。まずは、目の前の伸び伸びのプルダックを食べきらないと。チラリとテーブルを見つめる。
「…あれ。トッポッキは全部食べたんだっけ、…」
物忘れもするようになってしまったか、と軽くショックを受けながら、箸に手を伸ばした。
*
引越して2日目は、ひたすら庭の整備。
草むしり、花壇の花に水、裏の畑の野菜を回収など。とは言っても秋なので、野菜らしい野菜はなかったけれど。おばあちゃんは旬のものに目がなかったから、近くに柿の木なんかがあるかもしれない。冷蔵庫にも、旬の根菜があったし。
考えているうち、食べ物のことばかりだと気がついて苦笑する。
オレンジの小さなハンドシャベル片手に、庭を散歩してみる。今日は秋だけど、青空が広がっていて寒くはなかった。この家にいると、自分が大人で、仕事をしている身ということが嘘のように思えてしまう。好きなもの食べて、生活に必要なことだけしていると、不思議と子供に戻ったような気分になってくる。
近いうち仕事に戻るのよね、なんて思うと急に億劫で、深いため息がついてでた。
「…ヤー、頑張れわたし」
ぺちぺちとほおを叩き、シャベルを握り直す。色々悩む前に、この広い庭を綺麗にしないと。
*
広い庭を掃除し終わると、あたりはあっという間に真っ暗になる。
家に入って、家事と食事を済ませ、入浴、スキンケアをして、今日からは布団で寝るのでベッドに敷き布団を3枚重ねて、毛布と掛け布団も用意したら、あとは寝るだけだ。布団に入って消灯、目を瞑ると、すぐに眠気がやってくる。
心地よさの中、明日の平穏を願いつつ、ゆっくりと意識が沈んでゆく。
324人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:生姜焼き太 | 作成日時:2024年1月16日 22時