その小学生、呪術師ゆえ ２

その7 ページ8

『私はね、禪院家の当主になりたいから』

「…でも、本家は嫌なんだろう？」

『そうだよ。だから変えたいの』


初めて聞いた時は意味を理解できなかった。本家が嫌で上京してきたのなら、どうしてまた戻ろうとするのか。


『本家に苦しめられてる人間って、きっと私の他にも大勢いる。アンタや五条みたいな術式があればすぐにでも出世して禪院家潰してやれるんだけどね……地道に頑張るしかないの。私はアンタ達が羨ましいよ』

「……そんな事無いさ」


そのまっすぐな信念。自分より他人を思う寛大さ。そして何より、自ら過酷な道を選んで何倍も努力が出来ること。これ程才能に恵まれた人は中々いない。
"努力も才能のうち"、と彼女に笑いかければ驚いたように目を見開く


私は、彼女のことをほんの少しだけ軽視していたようだ。所詮は自己中心的な人間だと思っていた。



……でも、違った。君は誰よりも誇らしい人



『……なんか、そうやって褒められるの初めてかも』

「そうかい？本当の事を言ったまでだよ」

『…ありがと』



その時、彼女の笑った顔を初めて見た気がする。眉を下げ照れくさそうに頬をかく……その瞳が、声が。やけに美しく見えた

悟と話す時には決して見せない表情。でも私には心を許したかのように笑ってくれる……
何とも言えない優越感に襲われた。繊細で儚いものにすら思えた…


あぁ、もっと違う表情を私にだけ見せて欲しい。心の奥底でそんな感情が芽生える




「……Aさんは、悟が関わらなければ良い人なんだね」

『…まぁ。私の性格が悪いんじゃなくて、五条がクズなだけ』

「それは一理あるかも。何かされたら私に言うんだよ。喧嘩ばかりじゃ折角の美貌が台無しだからね」

『………えっ。何アンタ、誑し？』



ちょっとだけ、引かれた気がした

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