その小学生、呪術師ゆえ ２

その15 ページ16

体が動かない。息が出来ない。恐怖に駆られて何も考えられない。

真人と出会した時の比では無い。初めて"怖い"という感情に胸が押しつぶされそうになった。当たり前だ、自分を殺したかもしれない人間が目の前にいるのだから



……でも、傑は私だと気づいていない。私が禪院Aの生まれ変わりだってことを知らないんだ。今ならまだ、やり直せる。力を振り絞った



声を発さずぺこり、と頭を下げる。今の身体が小学生で本当によかった。狭い路地裏だが隙間を潜り抜け、決して目を合わせず逃げるように立ち去った。



幸い、傑が追いかけてくる事は無かった。なにか危害を加えられる事も無かった。大通りまで走って比較的安全な場所まで逃げてきた。目についた電話ボックスに入り、急いで受話器を取る。まだ震える指先で番号を押して悟に電話をかけた





「…はい、もしもし〜」



いつもの、間の抜けた声。妙に安心した。





『……さ、っ…』

「…その声Aか？どした？」



夏油傑がいる。その一言がどうしても言えない。はくはくと小さく息を漏らすだけで、ずっと黙り込んだまま。涙さえ出てきた。異変に気づいた悟が少し焦ったように声をかける




「どうしたA？おい！」


『……………っごめん。なんでもない。落ち着いたらまたかけ直す』




返事は聞かないまま乱暴に電話を切った。緊張からか急に目眩と吐き気がして、ズルズルと壁にもたれ掛かりその場で蹲る。


後から聞いた話だが……担任が駆けつけた頃には、私は電話ボックスの中に閉じこもって泣いていたらしい。その辺りからよく覚えていなかった

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