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__コンコン
” 在室中 ” と書かれた社会科準備室のドアに
手をかけ中に入ると
フワッと香る珈琲の匂い。
『お!来た来た』
なんて片手に持った珈琲を机に置き、
『ここ座り』
と空いた椅子を指さす先生。
「あの 私何かしましたか?」
マグカップを口元に持っていき
一口飲む先生。
『いや 高橋っていつも独りで行動してるし、なんやろ う〜ん なんか 苦しそうやねんな。』
苦しい___ 少し図星な私の心が
動揺でざわめく。
「そんな事ないですよ?」
『そうやって笑うのも 先生の前では辛かったら 無理しなくてええよ。』
先生は何もかも知ってるかのように
淡々と話を進める。
『せや高橋って映画好き?』
「へ?映画ですか?」
『俺は昔の映画が好きやねんな〜 白黒ならではの良い所があるというか』
そう少年のように楽しそうに話す先生に
釣られて笑ってしまう
心から笑ったのはいつぶりだろう
きっと私は気付かぬうちに 作り笑いを
してたんだ。
『あ 笑ったやろ〜』
「すみません つい」
『今のは作り笑い?』
「違います」
『明日オススメの映画持ってくるから もしええなら昼休み社会科準備室来い』
「わかりました」
______
きっとこの時から濱田先生はおかしかったんだろう。
気づかなかった。
いや気づけなかった
きっと高校生の私は自分の事に精一杯だったから。
この時ちゃんと気づいていれば
何か先生の中で変わっていたのかもしれない。
あんな事件なんて起きなかったかもしれない。
”後悔” この言葉が今もずっと胸に重くのしかかっている。
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作者名:風 | 作成日時:2017年10月29日 9時