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皿を割る。
家電を壊す。
彼女は不安を打ち消すように、色んな物を壊していくようになった。今日も何かが割れる音がしているけれど、いつしかそんな音にも耳が慣れてしまって。
リモコンが投げられたテレビは画面の一部にノイズが入り、とても見れたもんじゃない。
スマホも彼女とパスワードを共有し、SNSは一切禁止。仕事以外の外部からの情報もシャットアウトされ、閉塞的な生活を送っていた。
それでも落ち着くどころか悪化していく彼女。
彼女の束縛はプライベートだけに留まらず、職場にまで及ぶようになった。
「何でここにまで来てんだよ!」
「だって、浮気してるかもしれない、」
「そんなことするわけねぇだろ!」
彼女は「帰れ」という俺の言葉を無視して職員室に乗り込み、恨みを込めたような目付きで職員室を見渡した。
「今度は誰と浮気してるの?ねぇ....」
職員室にいた先生や生徒たちは不審そうな目で俺たちを見つめていて、社会的死を覚悟するほどだった。
「あの女!」
「え....私?」
「浮気してるんですよね!?」
「え....ち、違いますよ!何言ってるんですか!」
「いい加減にしろ!」
あまりに自分勝手すぎる彼女への怒りから、職員室に似つかわしくない怒鳴り声を響かせてしまう。
何も関係ない先生まで巻き込んで、挙句、校長室にまで呼ばれて。叱られるのは俺。
「渡辺先生、困りますね。痴情のもつれを職場にまで持ち込まれるのは」
「....申し訳ありません」
「これでは生徒たちに示しがつきませんから、学校には来ないように言い聞かせてください」
「....はい、」
お叱りを受けた俺は、重い足取りで校長室を後にする。廊下を歩く生徒たちの視線が痛い。
「しょっぴー彼女乗り込んできたらしいよ」
「修羅場じゃん、やっばー」
引き起こしたのは他でもない自分自身だからと言い聞かせてきたけど、もう限界だった。
それから俺は精神を病むようになり、水もろくに喉を通らないくらい疲弊していった。
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cleam(プロフ) - 彩海さん» お返事が遅くなり申し訳ないです....!楽しんでいただけたようで、本当に嬉しいです( ; ; )ありがとうございます( ; ; )現在連載中の作品など、他の作品でも楽しんでいただけたら嬉しく思います! (2021年11月29日 23時) (レス) id: c295088e12 (このIDを非表示/違反報告)
彩海(プロフ) - 苦しいくらいぎゅんぎゅんさせていただきました……。cleam様の書くお話は全て苦しいです!!(もちろんいい意味です)完結お疲れ様でした、今後もお世話にならせて頂きます、笑 (2021年11月17日 22時) (レス) @page49 id: b8d91d7ead (このIDを非表示/違反報告)
cleam(プロフ) - つばささん» わー!よかったです( ; ; )幸せになるシーンが少なかったので、短いながらにお届けしてみました....!楽しんでもらえて嬉しいです( ; ; ) (2021年11月13日 21時) (レス) id: c295088e12 (このIDを非表示/違反報告)
つばさ(プロフ) - にゃー!甘々すぎて胃もたれしそうです…♡(略:最高です♡笑)更なる幸せそうな二人まで書いて下さって心がホッコリしました♡本当にお疲れ様でした(^^) (2021年11月11日 23時) (レス) id: a84a28701a (このIDを非表示/違反報告)
cleam(プロフ) - センさん» ありがとうございます!続きをと仰っていただけることがとっても有難いです( ; ; )ただもう残りページがほぼないので超短編になりそうですが、なんとなく浮かびそうなのでまた出してみますね^^気長にお待ちいただけたら幸いです! (2021年11月8日 23時) (レス) id: c295088e12 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:cleam | 作成日時:2021年10月25日 22時