Dream assorted yt × in (( HBD短編集 )) (ページ7)

今日:29 hit、昨日:1 hit、合計:131,872 hit

1. ページ7

inoo.

「お兄さん、頑張ってね」

「はーい、ありがとうございまーす」

深夜のレンタルビデオ屋。

客は酔っ払いか疲れきったサラリーマンがほとんど。でも給料いいし、仕事も楽だから割と長く続けてるバイト。

自分で言うのもなんだけどおれってそれなりに顔が可愛いからお客様からも人気なわけで、常連さんとはけっこう仲がよかったりする。

酔ってる人でも親切にしてあげれば問題も起きないし、割とどんなお客さんにも対応できてると思うんだ。

でも、

「こんばんは、お兄さん」

おれには苦手な客が一人だけいる。

「あ、…こんばんは」

ナカジマユウトさん。カードに記された名前はもう覚えてしまった。

週に2回、火曜日と金曜日に必ずやってくるサラリーマンで、ぶっちゃけそこらの俳優とかよりイケメンな大人の男の人。

「今日、忙しい？」

「いや、暇です」

気軽に声をかけてくれるし、カッコイイし、最初はすっげえいいお客さんだと思ってた。

だけどおれは気づいてしまった。いや、気付かされてしまったんだ。

穏やかな瞳の奥に隠された熱を。
どろりと絡みつくようなギラついた欲望を。

「ふふ、今日も可愛いね」

「あ、ありがとうございます…」

ああ、きた。

「ほっぺた引き攣ってるよ？」

「いや、あの、…んっ」

「やっぱり可愛い」

毎回恒例のセクハラタイム。

いつからだろう、彼がおれに触れてくるようになったのは。そしてそれをおれが拒めなくなったのは。

「ねえ、1個聞いてもいいかな？」

するりと頬をなで上げる指先が怖いのに、どうしても逃げ出せない。

「アダルトコーナーってどこ？」

にっこり上がった口角にちょっと掠れた甘い声と、欲情を隠しもしないその顔に今日こそヤバいって気がついてた。

だけど、

「ご案内、します…」

自分の言うことなんてとっくに聞かなくなった身体が、カウンターをするりと抜けた。

流れる空気がとろりと濃くなる。

「こちらです」

「うん、」

重なった視線は濡れていた。ああ、食われるって思った。

「ありがと、お兄さん」

コロンが香るスーツの腕が腰に回った時、

おれにはもう"逃げる"なんて選択肢は残されてないことを悟った。