Dream assorted yt × in (( HBD短編集 )) (ページ43)

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「ね、みて、綺麗」

「そうだね、凄く綺麗だ」

これぞ高級ホテルなガラス張りのバスルームで、向かい合いながらだだっ広いバスタブに沈む。

「慧くん元気ね」

「んー？だって昨日も一昨日もしなかったんだもん。おれ、待ってたのに」

「慧くんのえっち」

「いいもん、おれはどーせえっちな子だもん」

ふいっと顔そらした恋人は案外タフで、2回も抱き合ったあとなのに風呂まで入って拗ねる余裕があるらしい。

「もー、機嫌直して」

「どうしようかな～」

「またそんなこと言って」

「…可愛くない？」

「もう、…可愛いから困ってんでしょ」

ちゃんとした大人なのにな。こういうところが可愛い。なんなら昔よりわがままになってるところは、可愛さ倍増してるんじゃないって思うんだ。

「ほら、こっちおいで」

「しかたないから行ってあげよう」

「はいはい、ありがとうございます慧さま」

「ん、苦しゅうない」

伸ばした手を引き寄せたら、軽い体が胸の中に入り込む。

遠慮がちだった彼も可愛かったけど、こんな風に図々しい本性だって俺には誰よりも可愛い。

「ディナー、美味しかった？」

柔らかなお腹をつついてそう聞けば、はにかんだ君が頷いた。そしてくすりと笑いだす。

「美味しかったけど、昔のこと思い出した」

「昔？」

「裕翔さんがおれとの約束ブッチしたこと～」

「ちょ、それまだ言う？てかブッチはしてないから！」

ニヤニヤする慧くんが昔の話を持ち出すのはよくあること。この話は頻繁に挙げられるからほんとに参る。

でも、それくらい俺たちの間には色んなことがあるんだ。思い出しては笑っちゃうことも、もう二度としないって誓うことも、二人で乗り越えてきた。

だから、今日のことも思い出になるといいなって思う。

この旅行も、慧くんの誕生日も、いつか思い出して幸せになれるものにしたい。

年に1度の特別な日を毎年俺にくれる君だから、

君を幸せにするのは俺でありたい。

「まあね、あの日のこともいい思い出だけどね」

ふわりと笑った君が俺と同じことを思っていてくれることが幸せだ。

「今思えば、慌てまくった裕翔さん可愛かったなって思うし」

あの時の俺と同じ歳を重ねた君を、これからもずっと大切にするよ。

「ま、酔っ払いすぎてわけわかんなくなってた慧くんも可愛かったけどね」

「う…、それは言わないお約束～」

恥しいがしそう伏せた瞳に、また新しい恋の火がついた。

この夜をもうすこしだけ長くしてもいいかな、慧くん？