Dream assorted yt × in (( HBD短編集 )) (ページ30)

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yuto.

【マーキング】

勝手知ったる他人の家。水気を帯びた髪を拭きながら、ぺたぺたと廊下を歩く。

そして、

「いーのちゃん、何見てんの」

「わっ、ゆ、ゆ、裕翔くん…っ」

後ろからそっと近づいて無防備な背中に抱きついたら、華奢な肩がぴくりと跳ねた。

はは、今日も大成功。
いのちゃんってほんと俺の声に敏感。

まあでもそこが可愛くて、自分でもびっくりなほどツボなんだけどね。

「あー、この雑誌？言ってくれたらあげたのに」

「それはいいの、だって自分が買うことに意義があるから」

俺が表紙を飾った雑誌を構えて全面バリア。恋人なんだから近づいてもいいじゃんって思うけど、耳まで真っ赤だから許してあげよう。

きっと彼が照れてしまってるのは俺の格好のせいだしね。

仕事帰りに立ち寄った恋人の家。シャワーを借りたのは、まあ…わかるでしょ？

つまりこの家の家主の彼と俺は、もうすでにそーゆう関係で。照れる方がおかしい気もするけど、相手がいのちゃんだから仕方ない。

だって彼は、俺のファンだから。

アイドルという職につく俺の、熱烈なファンだから。

「ライブのチケット、本当にいいの？」

「いい、自分で当てるから」

「じゃあ外れたらあげるから」

「それじゃ駄目なの～…」

そう言って俯く姿は、ちょっと有り得ないほど可愛い。俺のことが大好きって全身で訴えてるんだもん。すげえ、そそるよ。まじでもう食っちゃいたい。

雑誌の俺と、現実の俺を見比べて、幸せそうに笑う君が恋人になったのは半年前。

握手会に来てくれた君に俺が一目惚れしたことから始まった恋。

いつでも君は特別扱いを嫌がるけど、恋人相手に特別扱いしないなんてことは普通の男じゃできないよ。

コンサートだって、握手会だって、君が来てくれたらテンションが上がるしもっともっと頑張れる。

だからそんなしおらしく雑誌ばっか眺めるのはもうやめてよ。君は俺の特別な人なんだから。

「いのちゃんは、どれくらい俺がいのちゃんのこと好きか知ってる？」

裸の胸をくっつけたら心臓の音が聴こえるかな。

俺はこんなにいのちゃんにドキドキしてるよって伝わるかな。

「俺をこんなに夢中にさせちゃうのは、世界中探してもいのちゃんだけなんだから」

お得意のアイドルボイスを使ってやれば、抱きついた身体がかあっと熱くなる。

「はやく、俺の"特別"に慣れてね？」

カプリと噛み付いた項には、俺の所有印が刻まれた。

さあ次は、どこにその証を刻んであげようかな。