唯一無二な貴方を食べたい yt × in (( 短編 ))

(( シークレットトレイン ページ17

ノンリアルゆといのによるふたりきりの逃亡劇。






inoo.






「これから、どーしよっか」



「俺は……あなたがいれば、それでいいから」



「うん……おれも」






行先不明な特急電車の、二人がけシートで隣に座る裕翔がぎゅっとおれの手を握る。



デカくて骨ばってて男らしい手。



この手を離さないために、おれは、いや、おれたちは、逃げてきたんだ。









裕翔との出会いは三年前、数合わせでしぶしぶ行った合コン。



たまたま隣に座ったのが裕翔で、お互い数合わせ要員だったことに盛り上がって、合コンが終わるころには意気投合。



食事が終わる頃に、二次会のカラオケにいく他の奴らの群れからこっそり抜けて、逃げ出したんだ。






それから二人で飲もうってなって、たまたま合コンの店がおれのアパートの最寄りだったから、そっちで飲もうかって話になって。



馬鹿みたいに酒を買って、馬鹿みたいに飲んで、いつのまにか記憶がブラックアウト。



気づいたら朝で、目を開けたらありえないくらいの頭痛と腰痛。それと申し訳なさそうにおれをのぞき込む裕翔。






『伊野尾くん、昨日は、その……ごめん』






裕翔のその表情だけで、すべてを察したおれ。でも別に不快感なんて全然感じなかった。



男と寝たことはなかったけど、この時にはもう、裕翔ならいいかなって思ってたんだと思う。






『あの、伊野尾くん…？』






少し不安そうにおれを呼んだ裕翔の顔、今でもはっきり覚えてるよ。






『…………慧』



『え？』



『…慧で、いいから』



『……うん、ありがとう、慧』






それからおれと裕翔は、頻繁に会うようになった。



食事をしたり、たまに家でゲームしたり、人恋しい夜には身体を繋げた。







いつのまにか、おれの中で裕翔の存在が大きくなって、それが恋にかわるのに時間はかからなかった。

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