二毒 ページ7
狭く暗い路地裏で、二人の男が対峙していた。
両者は向かい合い、互いに薄く微笑んでいる。しかし、その場に波のように見え隠れしているのは紛れもなく殺意と嫌悪。彼らの発する一字一句は腹の探り合いであり、目線の向きを少しでも間違えればそれ即ち負けを意味するのであった。
「社長に盛った毒の正体を教えて貰おうか」
砂色の外套を着た男──太宰治が口を開いた。
君の目的は判っている、と彼は言う。
「本」を手に入れる為に横浜の異能者を根絶やしにする、その1つの手段として横浜の二大異能力組織である探偵社とマフィアを潰そうということだ。
「何故そう思うのです?」
「私ならそうするからさ」
「……似た者同士という訳ですか、いいでしょう。ぼくが盛った毒は『共喰い』の異能です。──二組織を潰すのは私ではありません、貴方がたです」
※※
二大異能力組織、探偵社とポートマフィア。その両方の長の傷口から、禍々しい空気を纏った魔方陣のようなものが浮き出た。それは妖しく一度瞬き、浮遊しているらしくゆらゆらと揺れていた。
ウイルスが動き始める。
二人を殺す為に。
※※
「糞ったれ。二日だと?」
中也が今しがた読み終えた手紙を握り潰し、怒りを込めて机に叩きつけた。無論、敵の頭目、ドストエフスキーからだ。
“鼠”には探偵社とマフィアの両方を、特に巨大な兵力を誇るポートマフィアを壊滅させる力がない。二組織を潰し合わせ、両方とも壊滅すれば万々歳、片方が残れば疲弊しきったその組織を潰せばいいだけの話だ。
「……姐さん」
中也が何か言いたげな目で紅葉を見る。対する紅葉は難しい顔だ。
「探偵社と闘る気か?黒幕の思う壺になるぞ」
「黒幕はブッ潰します!それでも二日じゃ時間が足りない」
現在マフィアと探偵社は和平協定を結んでいる。先に相手の長を倒そうとする、それは裏切りを意味するのだ。
──停戦の約束を突然マフィアが裏切ったら?探偵社が裏切ったら?損をするのは停戦協定を信じた方のみ。
首領が回復したとしても、その後に謀反で跳ねられるかもしれない。
しかし、48時間という短い時間、その間にウイルスを解除する方法など──
──やるしかねぇ。
誰に向けてでもなく、否、恐らくは己に向け、そう呟いた。
――――――――――
お久しぶりです。中国地方と近畿地方と九州地方に行ってその挙げ句宿題終わってないし熱だすしで疲れました。
リハビリ気分で書いたら文字数ギリギリ……
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ヒグレギ(プロフ) - 完結おめでとうございます!ひとつひとつ言葉選びが素敵な上、シリーズを通して予想もしなかった展開が何度も起こり、幾度となく楽しませていただきました。次回作も楽しみに待ってます。御自分のペースで頑張ってください! (2019年2月22日 21時) (携帯から) (レス) id: 298cf4baf3 (このIDを非表示/違反報告)
夕野きする(プロフ) - うわぁぁぁ質問ありがとうございます!一人も来なかったらどうしようかと思ってたところです……!承りました、後日回答させていただきます! (2018年11月1日 19時) (レス) id: 75dea9d01f (このIDを非表示/違反報告)
ねこ圭(プロフ) - 質問です。この作品を作ることになったきっかけはありますか?また、普段の夢主さんと中也さんの様子は端から見てどんな感じですか?(バカップルぽいのか、漫才コンビみたいなのかなど) 大した質問じゃなくてごめんなさいm(__)m (2018年10月31日 22時) (レス) id: d7aa474a6a (このIDを非表示/違反報告)
夕野きする(プロフ) - ※作者です。質問があればどんどん書いていってください!少なくとも2人は来てくれたら嬉しいな※ (2018年10月29日 22時) (レス) id: 75dea9d01f (このIDを非表示/違反報告)
夕野きする(プロフ) - 埴輪型竹輪さん» ありがとうございます!夢主とドストさん、そして中也さんの心情をこれからもお楽しみくださいませ。 (2018年6月10日 23時) (レス) id: d7453fd818 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夕野きする | 作者ホームページ:http://http://commu.nosv.org/p/asubook/
作成日時:2018年6月3日 18時