それぞれのスタート ページ14
「……ゲホッ。一体何だ、こりゃあ……?」
躰を起こし、周囲を確認する。其処は横浜、見慣れた景色だった。
只何時もと決定的に違うのは、真っ白なまでに塗りたくられた空。
遠くに見える筈のビルヂングも、その空に隠されて見えない。如何やら空というよりは“壁”の認識の方が正しい。
隣を見ると、探偵も何時の間にやら立ち上がっていた。先程チームプレイと云っていたから、危害を加えてくる事はなさそうだ。
この異常な空間の中で、老若男女様々な人間が買い物や食事などそれぞれの生活に勤しんでいて、それが不気味さを際立たせている。
長い黒髪の女が、俺達に気付いて此方ヘ歩いてきた。
「ようこそ。この世界には、あなた方を除く1000人の登場人物がいます。その中から500人の殺人鬼を──」
「君」
探偵が女の言葉をさえぎって、白い顔に指を突き付ける。
「殺人鬼だね」
女は何か言おうと口を開いていたまま固まっていた。そのまま口を閉じ、ぱちぱちと二、三度瞬きをした後、にぃっと口角を上げたかと思うと──ぱりん、と割れるような破砕音を響かせ、光の粒子を撒き散らし消えていった。
後には何も残らなかった。
※※
──元探偵社員・田山花袋が、敵の
知らせを受けるや否や、国木田、太宰、芥川、敦の4人は其処へ向かう運びとなった。敵は全員が音声無線持ちだ。
潜窟を前にした処で、不意に芥川が車の扉を開けて外に出る。
「人虎。2点のみ記憶せよ、遅れれば捨て置く、邪魔すれば殺す。善いな」
そう吐き捨てると、異能で外套を支えとし、見張りの上を軽々飛んで行った。
強度も射程も明らかに強くなっている。
……ん?
自身が置いてけぼりにされたことに気づいた敦は、慌てて扉を開けて外に出る。
「僕も行ってきます!」
クラウチングスタートから、脚に力を収束させて──一気に放つ。
加速。
一陣の旋風が起こり、次の瞬間敦は芥川の背後に飛び込んでいた。
「虎の脚力加速で感知器どころか敵の目すら『抜いた』のか。敦の奴、何時の間にあれほどの……」
芥川と敦、その両方の成長を見て、太宰は満足そうに微笑んだ。
国木田の座席に手を掛けて、その身を乗り出す。
「さて……我々も負けてはいられない。
※※
探偵は歯を見せて、不敵に笑っている。
499の殺人鬼がいる雑踏の中へ、足を踏み出した。
「さぁ、
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ヒグレギ(プロフ) - 完結おめでとうございます!ひとつひとつ言葉選びが素敵な上、シリーズを通して予想もしなかった展開が何度も起こり、幾度となく楽しませていただきました。次回作も楽しみに待ってます。御自分のペースで頑張ってください! (2019年2月22日 21時) (携帯から) (レス) id: 298cf4baf3 (このIDを非表示/違反報告)
夕野きする(プロフ) - うわぁぁぁ質問ありがとうございます!一人も来なかったらどうしようかと思ってたところです……!承りました、後日回答させていただきます! (2018年11月1日 19時) (レス) id: 75dea9d01f (このIDを非表示/違反報告)
ねこ圭(プロフ) - 質問です。この作品を作ることになったきっかけはありますか?また、普段の夢主さんと中也さんの様子は端から見てどんな感じですか?(バカップルぽいのか、漫才コンビみたいなのかなど) 大した質問じゃなくてごめんなさいm(__)m (2018年10月31日 22時) (レス) id: d7aa474a6a (このIDを非表示/違反報告)
夕野きする(プロフ) - ※作者です。質問があればどんどん書いていってください!少なくとも2人は来てくれたら嬉しいな※ (2018年10月29日 22時) (レス) id: 75dea9d01f (このIDを非表示/違反報告)
夕野きする(プロフ) - 埴輪型竹輪さん» ありがとうございます!夢主とドストさん、そして中也さんの心情をこれからもお楽しみくださいませ。 (2018年6月10日 23時) (レス) id: d7453fd818 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夕野きする | 作者ホームページ:http://http://commu.nosv.org/p/asubook/
作成日時:2018年6月3日 18時