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黒崎side
「『ありがとうございましたー！』」
ラストの舞台が終わり袖にはけると、次のコンビの出囃子が頭に響く。
立っているのもやっとの状態で早く楽屋に戻ろうと歩き出すと
後ろから背中をグイッと前に押されそのまま勝手に進み出す。
そして背後から廊下に響き渡る高い声。
『はぁーいくろさんお帰りでーす！』
黒崎「はぁ？ちょ、なんやねん、！」
Aが高らかにそう言うとたちまちそこらから
「くろさん大丈夫っすか！」「よく休んでください！」と
後輩やらスタッフやらに声をかけられる。
何が何だか分からずオロオロしている俺の後ろで
おいごらどけどけー黒崎さんに道開けろおらー、と
後輩を蹴散らすA。
黒崎「お前、アイツらに何か言うた？てかなんで…」
『あんなぁ、毎日嫌でも会うてたら
調子悪い日ぐらいすぐ分かるわ。
他の人には口止めしといた』
そう言って小さくへへっと笑う。
オカンか、お前は。
そんなことを思いながらも、
Aのドヤ顔が思い浮かんでふっ、と笑いが漏れる。
そして歩かされるがままに歩き、
気づけば楽屋入口前に止まっている車の前。
『ほい、とーちゃーく』
木野「Aさんありがとうございます！
本来私の仕事やのに…」
『ええんやて！逆にごめんな？こんな急に…
全てはこいつのせいやから！』
黒崎「…否めへんのが悔しい」
そしてあれよあれよと車に乗せられ荷物を投げ込まれ
Aがドアを閉める直前。
黒崎「…なあ、」
『ん？』
黒崎「何で口止めしたん」
『やって「大丈夫ですか？！」なんて言われたら
心配させへんように、って無理やり平気なフリするやろ？
そんなことして漫才中倒れられたら余計迷惑やもん』
黒崎「しれっと迷惑言うな」
『あーあ、明日筋肉痛やわぁ』
黒崎「…ありがとう、な」
『うわぁ、素直なくろきもちわる…』
黒崎「はぁ？！人がお礼言うてんねんからそんなこと言うなや！」
『ふふっ、そんな元気なら心配なさそうやな』
木野ちゃんよろしくー、とAがドアを閉めると
車がゆっくりと動き出す。
バックミラーで後ろを覗くと
そこにはもう誰もいなかった。
アイツ、なに相方っぽいことしてくれとんねん。
木野「黒崎さん、思ったより元気そうで良かったです」
黒崎「え？」
木野「いや、表情がいつもより柔らかいので」
黒崎「…そんなことないで」
あぁ、ほんまにムカつく。
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作者名：あんず | 作成日時：2022年2月11日 11時
