Fate/いくつもの花

外伝１―２ ページ3

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「――Aか」

 その１発で誰(だれ)だか判(わか)る声が耳に届(とど)いて、そちらに顔を向ければ、薄(う)っすらと目を開(あ)けてこちらを見る王の姿があった。

「……解決できるものはしておくから、あんたは寝てな」

 と、澄(す)んだ声を通して彼女が答えれば、「…………」と王はしばらく何も言わないでいる。

「――６件(けん)はあったであろう。全(すべ)て行くつもりか？」

「自分に訊(き)きなよ」

 考えるまでないでしょと、今まであたしといたなら判(わか)るだろうという意味だ。

 Aからしたら、大(たい)した量ではない。一瞬(いっしゅん)で討伐(とうばつ)ならば終わってしまうだろう。それは王も無論(むろん)判(わか)っているが、王はやり取りとして訊(たず)ねたのだ。

 Aは報告書に書いてある場所を、もう１度確認(かくにん)するために開(ひら)く。

 彼女の言葉を聞いて、王は顔を戻(もど)すと天井(てんじょう)を見つめる。そうして、しばらく間を空けてから声を通した。

「……そうさな。すぐに向かうのか」

「被害(ひがい)が増える前にね」

 彼女が答えれば「……そうか」と、静かに呟(つぶ)く。

「シドゥリが呼(よ)んでたけど、休んでるっていっとくから寝てな」

 報告書、とりあえず預(あず)かるからと言うと、彼女は部屋を出ようと踵(きびす)を返(かえ)す。

「A、いつ戻(もど)る気だ」

 声を聞いて、後ろをふり返る。

「なんで」

 と落ち着いた声で訊(たず)ね返す。

「何か用が出来(でき)た時のためよ」

「……遅(おそ)くても明日には帰ってくるけど」

「今日戻(もど)っては来れぬのか。おまえであれば容易(たやす)い事であろう」

「戻ってこれるとは思うけど、なにかあれば明日になるでしょ」

 彼女がそう返せば、王は反対側(はんたいがわ)に顔をやってしまう。それを見て、Aは何かを感じる。

「……どうしたの、あんた」

 疑問(ぎもん)に思いながら彼女は訊(たず)ねた。


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