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願ったのは by清華さん ページ28

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 Aの美しい髪を崖から吹く風が撫でる。

 彼女が見下すのは、かつて自分が暮らしていた故郷だ。あそこには、思い出がたくさんある。
 彼女の淡い金色(こんじき)の目が揺らいだ。

(セウ――……)

 Aはすでに失った自らの大切な人の名を心で呼んだ。

 呼び起こされるのは、彼との思い出だけではない。母さんと過ごした幼い日。セシリさん、ウトゥさんに迎え入れてもらったあの日。

 セウと、セシリさんと、ウトゥさんと暮らした日々が頭の中を駆け巡る。

 あの日からどんなに時間が経っても忘れられない。護れなかった自分を呪って日々を送った。──どうして、彼が、奪われなければならなかったのか──どうして、彼を、護ることができなかったのか──

 血の味が広がったことで、Aは無意識に唇を噛み締めていたことに気がついた。ふぅ、と小さく息を吐いて、Aは崖の下へと進んでいく。









 甘い――。

 セウとよく森に行って食べたトゥートゥの実を口に含む。時折混じっている白いものを弾き、赤黒いものを手にした。

 カゴにいくらかとった実は、一人で食べているとなかなか減らない。──そうか、あれは二人で食べていたからあんなに早く無くなっていたのか。

 あの日々を思い出して、目元が滲んだ。


(全て、この手から落ちていく――)

 Aは口に運ぶ手を止め、両手にその幻覚を見た。こぼれ落ちていく実と、失った命が重なる。

 奪われたのか。──そうだ。
 護れなかったのか。──そうだ。

 Aは幾度も重ねた自問自答を繰り返す。

 固く握った拳から血が滲むのを、どうせすぐ治るのだからと、Aは気にも留めなかった。

(セウ……セウ――ッ)

 あたしは故郷を見捨てれば良かったのだろうか。そうまでしてでも、セウとどこか遠くへ行けば良かったのかだろうか――

 静かな森にAの嗚咽(おえつ)が響く。

 今さら遅い。セウは、セウも、この残酷な世界にはいないのだから――



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葵梗花(プロフ) - 清華@1話ごとの題名の付け方教えてさん» こちらこそ、いつも有難うございます。はい。英雄王の印象は関わる前から最悪でした。絶対に関わるべきじゃないと思ったのにと。エルキドゥはそうですね。有難うございます。ほのぼのしていただけたなら良かったです。 (2019年5月8日 10時) (レス) id: fc9c29b555 (このIDを非表示/違反報告)
清華@1話ごとの題名の付け方教えて(プロフ) - 質問回答ありがとうございます!やっぱりギルは悪印象なんですね!エルキドゥには最初から印象が良いのが、意外ではないですが──なんでしょう。とにかくほのぼのしました! (2019年5月8日 9時) (レス) id: d3cf4c2f26 (このIDを非表示/違反報告)
葵梗花(プロフ) - 清華@1話ごとの題名の付け方教えてさん» これからもよろしくお願い致します。 (2019年5月7日 16時) (レス) id: 1078c15fa9 (このIDを非表示/違反報告)
葵梗花(プロフ) - 清華@1話ごとの題名の付け方教えてさん» いつも有難うございます。お気に召したようで良かったです…!こちらこそ、リクエスト有難うございました。花についてのリクエストはお時間頂いてしまうと思うので、そちらはすみません。調べて書けそうになったら書かせて頂きますね。 (2019年5月7日 16時) (レス) id: 1078c15fa9 (このIDを非表示/違反報告)
清華@1話ごとの題名の付け方教えて(プロフ) - シルカッコいい‥‥‥そして優しい‥‥‥素敵なお話ありがとうございます!! (2019年5月7日 13時) (レス) id: d3cf4c2f26 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:竜胆叶華 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年5月7日 0時

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