Fate/いくつもの花

お祭りというのに―１ ページ16

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それは、もしもの物語(ものがたり)。



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「A。お祭(まつ)りというのにいかないかい？」

「――祭り？」

「花垣町(はながきちょう)でお祭りがあるみたいだね。ヤッカスの前に貼(は)ってあったよ」

 帰ってきたと思えば、エルキドゥは帰ってきて早々(そうそう)そう話し始(はじ)める。確(たし)かに、この時期(じき)になればスーパーなどで花垣祭(はながきまつ)りの宣伝(せんでん)のポスターが貼(は)ってある。それも自治会(じちかい)の子供の手描(てが)きポスターがだ。ヤッカスドラッグでエルキドゥはそれを見たらしい。

 台所(だいどころ)で作業(さぎょう)をしていたあたしは、手を動(うご)かしながら考(かんが)える。

 エルキドゥ１人で行かせるのはエルキドゥ的に嫌(いや)だと思う。かと言ってあいつと行かせて問題(もんだい)が起(お)きるのは避(さ)けなければいけない。

「――わかった、行けばいいんでしょ」

 そう言えば、エルキドゥは穏(おだ)やかに微笑(ほほえ)む。育(そだ)った樹木(じゅもく)のように穏(おだ)やかに、優(やさ)しく。

 そのまま、ありがとう、Aって反応(はんのう)する。

「ギルもいいかな」

「やっぱそうなるの」

「ギルだけ誘(さそ)わないのは怒(おこ)ると思うからね」

「あいつが騒(さわ)ぎ起(お)こしたら堪(たま)らないんだけど――」

 あたしがそういえば、エルキドゥは視線(しせん)を外(はず)して考えるように黙(だま)る。

「そうだね、ギルには僕からいっておくよ。それじゃダメかな」

「それだけでどう――」

 あいつの気配(けはい)が近場(ちかば)にやって来た。だからあたしは口を閉(と)じた。聞かれたら騒(さわ)ぎだすと思うからだ。

 そのまま、エルキドゥには念話(ねんわ)を送(おく)る。

『言わなくてもわかるよね』

 と静(しず)かに話せば、ギルが近くに来たみたいだね、とエルキドゥは念話(ねんわ)で答える。

 あたしは念話でのエルキドゥの言葉を聞いて頷(うなづ)く。そしてあたしは切った野菜(やさい)を丸(まる)い笊(ざる)に入れていった。


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